暗転した会場内にしょおくんの低い声が流れる

早めに準備を終えた俺は舞台袖で目を瞑り、その声に耳を傾けた

普段話すトーンよりも少し低めのゆったりした声に速くなっていた鼓動が落ち着きを取り戻していく


スポットライトがランウェイを一筋の道の様に照らすとショーが幕を開けた

1人目のモデルが歩き出した時、俺の肩が強く引き寄せられた

安心する匂いと温もり

「しょおくん……」

顔を上げて目線を合わせると、穏やかに微笑んでくれる

「ここに居るから……ここで見届けてるから」

ポンと背中を押されて、俺は光の中に進んで行った



会場の独特の雰囲気も、戦場の様な楽屋の慌ただしさも

全てが心地よくて、この場に戻ってこれた事が嬉しい

まぁに急かされて次の衣装を着て、大野さんにヘアスタイルを整えてもらいながら、舞台袖に向かう

そしてランウェイを歩く

最後の衣装に着替えて舞台袖に行く途中、最後ののナレーションの準備をしていたしょおくんに強く抱きしめられた


「ち、ちょっと……」


周りにいたモデルやスタッフたちの動きが一瞬止まった


「やっぱり潤が1番綺麗だ……」

耳元でそう囁かれて、こめかみにキスまでされて、出番前なのに俺の顔は真っ赤だ



「ほらほら、フィナーレの準備するよっ!」

まぁの一言でまた、周りが慌ただしく動き出す


俺も慌てて出番に備える様に気持ちを切り替えた

出るまでに赤い顔が治るかな?









無事、フィナーレを迎えデザイナーさんとモデル達ともう一度、舞台にあがる

たくさんの拍手とみんなの満面の笑みに囲まれて、やっと身体の力が抜けた気がした