ズズっと鼻をすする音が隣から聞こえる


「よく頑張ったな……」

ぐりぐりと頭を撫でてやれば、更に嗚咽を漏らす

俺も俺で、いくら唇を噛み締めても流れ落ちるものが止まらない

隣に並ぶ肩をそっと引き寄せて、頭を俺の肩に乗せてあげる

ぐすぐすとその肩に埋もれて顔を擦り付ける姿は、さっきまであんな大きなステージを背負っていたとは思えないほど小さくて、いつまでも守ってあげたいと思ってきた末っ子そのもので、つい笑みが零れる


年齢を重ねる度に末っ子というイメージより、このグループを引っ張る逞しさの方が際立ってきて、頼もしくもあったけど寂しくもあった


でも、やっぱり元来の気質は変わらない

お互いどんなに歳をとっても俺からしたら末っ子には変わりなくて、やっぱり俺に兄貴でいたいと思わせる







「ぐすっ………さとしぃ~~~」


そんな甘えた声、出すなよ
さっきから後ろからの痛いくらいの視線が怖いんだよ


「ほらほら、たくさん汗かいたのにこんなに泣いたら身体の水分がぜーんぶ無くなっちまうぞ」


「無くなっても……いぃ……」


こらこら、そんな事言うと更に後ろが向けないだろうが

「リーダー………」

俺より逞しく育った腕にグッと抱き締められて不覚にもドキドキしてしまう

おんなじ男なのに、こいつはなんでこんなに魅惑的なんだか…
俺はそんな子に育てた覚えはないんだけどなぁ


ポンポンといまだに上下する背中を撫でて、頭を撫でてやる


「これからも一緒だろ?」

「うん……」

「月1で飲み会するんだろ?」

「うん……」

「旅行にも行こうな」

「うん……」


そう、俺たちは一旦の休止なんだから

さよならじゃない

今は別々の道を選んだけど

その先のずっと先はまた1本に繋がる日が来るんだろ?



「ほらっ、顔上げて……」

「でも……」

「もう俺、後ろからの視線に殺される」



俺の肩から顔が上がったタイミングで、クルっと反転させられたその身体


「潤……」

トンっと撫でた肩に額をつけた

ふっと微笑んだその顔はさっきまで俺を視線だけで恐怖に陥れていたやつと同じとは思えないほど甘い

「兄さんを困らせるんじゃないよ……」

「だって……」


全く……
俺に甘える末っ子にやきもきしてたくせになぁ

やっぱりこの末っ子にはみんなが振り回されるんだな

きっと
これからも
ずっと…………