「『モデルの松本潤と会わせてやるよっ』って言われて………お、俺は……ただ言われた通りにしただけなんですっ!! じ、時間になったから、指定されたここに来たら……こ、この状態……で……」


ホテルの部屋の片隅で震えている男が、部屋に飛び込んで来た俺に言い訳をする


「お、俺……男しか好きになれなくて………ずっと松本さんに憧れてて……この業界に入ったのもそれが理由で………」


「もういい………」


理由よりも早く潤をここから連れ去りたい

「す、すみません……すみませんでしたっ!こ、こんな事になるなんてっ……」

「だから、もういいって言ってるだろっ!!」

近付いてくる救急車のサイレンを聞きながら、壁を思いきり叩きつけた










相葉さんがスタッフから聞いた話だと、その男と小栗先輩は美容学校の同期だった

松本潤の出るショーに関われると、嬉しさのあまり小栗先輩に報告した時に初めて、小栗先輩と潤が知り合いだと聞かされたと

「直接会わせてやるから、終わった後、楽屋から連れ出して」
と言われて、ただ会いたい、話したい一心だったと


指定された時間に指定されたホテルに行った時にはすでに小栗先輩はいなくて、この状態の潤がいた

どうしていいか分からずに、スタッフに慌てて連絡を取ったらすでに会場では騒ぎになっていたと



「くそっ………」


救急車の中、潤の手を握り締めながらどうしようもない怒りが沸き起こる

それは小栗先輩に対してなのか、守れなかった自分に対してなのか………






搬送された病院の処置室の前

バタバタと看護師が行き来している音

時折、漏れ聞こえる医者の指示の声


全てが夢であって欲しくて、でも現実だとその音たちに突き付けられて、ひたすら早く潤の側にいれるように願った