「櫻井さん、こちら来月のスケジュールです。確認お願いしますね」


生放送が終わった楽屋
マネージャーから来月のスケジュールが渡される


「あっ、この仕事、決まったんだ?」

「はい、ショーの裏側密着なんて初めてですね」

「あぁ、どんな感じなのか楽しみもあるよな。
しかも、こんな国内一流のショーにさ」

「出演するモデルの名前見てるだけで、圧倒されちゃいますよ」



資料の中の出演モデルの欄にある名前に目が止まる


『松本 潤』


あっ、ずいぶん前にインタビュー受けてもらったモデルさんだよな

すっげーな、こんな一流のショーに出ちゃうようになったんだな
確かに良くテレビや雑誌でも見かけるよな


俺がインタビューをした時はまだまだ駆け出しで、写真を撮られる事にもぎこちなさが残ってた

だけど、人を惹きつけるなんとも言えない空気を持ってたんだよな




トントントン―

昔の事を思い出していると楽屋の扉がノックされた


「はい」

「失礼しまーす」


にこにこと笑顔で入ってきたのは、さっきまで番組で共演していた女子アナ



「お疲れ様です。どうかしましたか?」

「櫻井さん、今日もフォローしてもらっちゃってすみませんでした~~」

「いえ、お互い様ですから」


何回か一緒に番組をやっている女子アナだか、天然を売りにしているのか、いろいろやらかしてくれる

俺から見れば、そんなの作られたキャラなんてバレバレだけど、世の中の需要は多いようだ


「お礼にこれから一緒にお食事でも行きませんかぁ?」


下心もバレバレだな……

「すみません、これからまだ仕事があるので」

「えー、そうなんですか?残念~~」

さっさと身支度をしてここから脱出しようと鞄に荷物を詰めていると、グイッと腕を引っ張られた


ゾクッと悪寒が走る


「じゃあー、これ、私の連絡先なんですー。仕事、終わってからでもいいんで連絡下さい~」

わざと胸に当たるように腕を組まれ、俺はその手を振り払う


「マネージャーっ!」

外に待機してるマネージャーを大声で呼んだ

楽屋に入ってきたマネージャーは事を察して、すぐ女子アナの方へ

俺はその隙に楽屋を出た

掴まれた腕を汚れを拭き取るように撫でながら車へ乗り込むと、ふぅーと息を吐く


ハンドルを握ると心地よい車の振動を感じながら、家路についた