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パタリと扉が閉まる音で目が覚めた

扉の向こうでしょおくんの話声が聞こえる


「……だから………わかってる………」

途切れ途切れに聞こえる会話につい耳を澄ませてしまった




「親父が?今から?そんな急に言われたって、予定ってもんがあるだろ?」


なんとなく電話の相手も会話の内容も想像出来る
多分、俺たちの事

そして、しょおくんは俺の気持ちを最優先してくれてる事




「しょおくん、俺なら大丈夫だよ」

電話中に失礼かなと思ったけど声をかけた

「潤!」

「お母さんだよね?俺なら大丈夫。だからね?」

しょおくんはわかったと頷いた

「今から行くよ」

そう、お母さんに伝えると電話を切った




「潤?本当に大丈夫?無理しなくていい。まだ、これからゆっくりでいいんだから」

そうやって俺を優しい言葉で守ってくれる
だからそれにちゃんと応えなきゃって思う


「大丈夫……一緒にいてくれるんでしょ?しょおくんが守ってくれるんでしょ?」

「当たり前だろっ」

「だから大丈夫。行こっ?」



あまりお待たせするのも良くないから、手早く支度をしてホテルを出た

車の中でも、ずっと手を握って何度も俺の様子を伺うしょおくん

俺は俺で、大丈夫と言ったけど緊張と不安でいっぱいでしょおくんの顔を見たら泣いてしまいそうで、ずっと流れる景色をみていた


都心のビル群から少し離れた住宅街
その中にしょおくんの実家があった

駐車場に車を入れて、ギュッと手を握られる
頬を包まれ、しょおくんの方に顔を向けられて真っ直ぐにみつめられる


「本当に大丈夫か?今なら引き返せるよ?」

普段は凛々しいしょおくんの眉が下がってる

「んっ、大丈夫……ちょっと緊張してきちゃったけど……」

ギュッと抱き締められ、しょおくんの香りを吸い込む

「大丈夫………行こう?」

しょおくんの温もりに少しだけ緊張も緩んだ気がする





ピンポーンとチャイムを鳴らせば、パタパタと足音が近付いてくる

玄関の扉が開いて俺たちをお母さんが笑顔で迎えてくれた


「翔、おかえり
松本くん、いらっしゃい」

「こ、こんにちは……突然、すみません」

「こちらこそ、急にごめんなさいね」

「い、いえ……」

足が張り付いたように動かない


「とりあえず入るからっ」

しょおくんに手を引かれてお母さんにお辞儀をしながら玄関に上がった


リビングの扉を開く前に再度、手を握り締めてくれたしょおくん

扉を開くとソファーに座ったお父さんがいた




「親父………」

「は、はじめまして………松本潤と言います」

「……あぁ、聞いてる」

「は、はい………」

しょおくんに手を引かれお父さんの向かいに座る


「で、急に呼び出すなよ。俺にも予定があるんだよ。用件はわかってるんだから、早く話せよ」

「ち、ちょっと、しょおくんっ」

「いいから、黙ってろ。
親父が反対でも俺は潤と一緒に生きてくよ。
賛成されなくても今はそれでも仕方ないと思ってる。
だけど、俺は潤とじゃないと幸せにはなれない。それだけは譲れない。
これからの俺たちをしっかり見てて欲しい。
いつか必ず親父にも認めてもらえると思うから」


「しょおくん………」

一気に捲し立てる様に話したしょおくんの言葉に涙が溢れそうになる
泣いてる場合じゃないのに


「松本くん………」

急にお父さんに呼ばれた

「は、はいっ」

溢れそうになる涙を堪えてお父さんの顔を見る

俺もしっかり伝えなきゃ
しょおくんがどれだけ俺に必要なのか

「お、お父さん……僕もっ……」

「松本くん、わかってるよ」

「「えっ?」」

しょおくんと俺の声が重なった