S
最初は駅の拓けている方面を探したが、なんか違う気がして反対方向に向かった
その間、潤のスマホを何回かコールするが出ない
通り掛かった公園に潤の姿をみつけた
「潤!じゅん!」
ゆっくりとこちらを向く潤
目線が合ったのにふいっと逸らされた?
「潤~~~、電話出ろよー」
「あっ……ごめん、気付かなかった………」
潤をぎゅっと抱き締める
潤の匂いにホッする
「だ……だめだよっ!」
潤が抱きしめていた腕からスルりと抜ける
反応出来ない俺
今まで恥ずかしがる事はあっても、こんな事なかった
「ほっ、ほら…そ、外だし、誰かに見られちゃうかもだし、もしかしたらしょおくんのお母さんが忘れ物して取りに来るかもだし…………ね?」
最後は懇願するように俺をみた
「ふっ、だな。じゃ帰るか」
潤の行動にいろいろ思う事はあるけど、そんな寒空にいたら風邪引かせちゃうし、さっきから無意識に触っている足も気になった
「歩ける?」
「大丈夫だよ、ちょっとゆっくりだけど。
あっ、寒いからしょおくんは早く帰って温まって」
「それはお前も同じ、ほらっ、乗れよ」
俺は潤の前に前屈みになって背中に乗るようにジェスチャーした
「えっっ!の、乗るの?」
「ほらっ!」
「いや、俺、男だし重いし………」
「俺より断然軽いだろっ、ほらっ、早く」
「で、でも……」
「これが嫌ならお姫様抱っこだけど、どうする?」
「ど、どっちも……」
あー、ラチあかない
そう思った俺は潤を肩に担いで帰り道に向かった
「ちょ、しょおくんっ!降ろしてっ!」
必死に降りようとする潤
「あんまり騒ぐと誘拐と間違れて通報されるぞっ」
その脅しが効いたのか大人しくなった潤
そのまま何の会話もなくアパートまで歩いた
俺に聞こえないように小さな嗚咽と鼻をすする音が微かに俺の耳に届く
その声が月に吸い込まれないようにと早足でアパートに向かった