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「潤、体調はどうだ?」

入ってきたのは昔からお世話になっている先生

「うん、大丈夫」

「櫻井さんが帰ってきたんじゃ、もう大丈夫だな」

「ち、ちょっと……」

ニヤニヤしている先生と真っ赤な顔の俺
あれ?こころなしかしょおくんも顔が赤い?

「まぁ、良かった。
で、潤。足の方なんだかな、どうだ?」

「ちょっと動かし辛いかな……」

「痛みは?」

「ない……」

「ちょっと立ってみるか?」

「はい……」

足をそっと床に降ろしベットを支えに立ち上がる

「じゃ、歩いてみて」

1歩前に踏み出す

前よりも動かしにくくなった片足が思うように前に出てくれない

片足を引きづる様に少しずつ歩く

「んー、座っていいぞ。外的な要因は検査しても出てこなかったからな。今回の事で気持ち的な部分からきてると思う。
足も少し通院が必要だな。」

「はい……」

「状態が落ち着いていれば明後日には退院はできるからな」

「はい、ありがとうございます」






先生が出て行った後、それまで黙っていたしょおくんが口を開いた


「潤……大丈夫か?」

「大丈夫だよ。きっとすぐに戻る………よ……ね?

しょおくんの顔を見ると安心しちゃって、大丈夫だと自分に言い聞かせても歩けなくなってしまうんじゃないかという不安に押し潰されそうな心に限界がくる

心配かけたくないのに、しょおくんの前では不安定な心が隠せなくなってしまう


「あぁ、きっと戻るよ。大丈夫。」


しょおくんの『戻る』『大丈夫』って言葉が何よりも俺の不安な心を包んでくれているようで暖かい


一気に溢れ出る涙をしょおくんが身体ごと抱き締めて拭ってくれる

頭を撫でる手が『大丈夫』と伝えてくれるようで涙が止まらない

落ち着いた頃にはしょおくんのワイシャツがぐっしょりと濡れていた