S


急いで予定を立て直す
スケジュール帳を開いて寝る間も惜しんで、予定を詰め込む

幸いにもここはヨーロッパ
理由を正直に話せば融通をきかせてくれる先方も多く、優しい言葉までかけて頂いた

おかげで予定より1日早く日本に帰れた

空港から直接病院に向かう


『今からそっち行く』


にのにLINEをしてタクシーに乗り込む





松本潤と書かれたプレートを見て気持ちが焦る

病室のドアを開ければそこにはベットで眠る潤とお姉さんがいた


「お久しぶりです」

「あら、櫻井くん。また、潤がご迷惑おかけしちゃってごめんなさいね」

「いや、こちらこそ、なかなか連絡とれなくて申し訳ありませんでした」

「仕事だもの。仕方ないわよ」


スーツケースを病室の隅に置き、潤の傍に行く

まだ顔色が良くないな
頭の包帯が痛々しい

そっと頬のガーゼを触り、潤の体温を感じ、無事だった事に安堵した


お姉さんが気をきかせて病室を出ていく

申し訳なく思いながらも潤と2人になれた事を嬉しく思う


「潤……ごめんな、遅くなって……」

額にかかる前髪を横に流してやると、ピクっと潤の瞳が動いた

ゆっくりと開く瞳に俺が映る


「……しょお……くん……」

擦れた声で俺を呼ぶ潤

「しょおくん………しょおくん…」

ゆっくりと手を伸ばす潤の手を握る

「潤……遅くなってごめん」

「しょおくん………怖かっ…た……」

ぽろぽろと零れ落ちる涙を指で拭ってやる
握る力をギュッと強める


「もう大丈夫、大丈夫だから」


しばらく頭を撫でてやると落ち着いてきた


「落ち着いたか?」

「うん……」

「怪我は頭と顔だけ?」

「腕とか肩とか打ち身みたいで動くのはまだ痛いかな。でも脳とか内蔵とかは異常ないみたいだから」

「そっか。足、調子悪かったのか?階段から落ちるなんて」

「………」

急に黙り込んだ潤
俺と視線を合わせようとしない

「何があった?ちゃんと言って?」

少し間があったが俺のいない間の事を話だした

何度も誘われて困っていた事
いろいろ考え出したら眠れなくなっていた事
そして、なんとなく背中を押された感じがして階段からから落ちた事


「しょおくんに心配かけたくなくて……
言わなくてごめん………」

「いや、俺のもバタバタしてたから言い出せなかったのもあるだろ?
お互い様だな、今回は」

「……うん…」

気になるのは背中を押された事
妥当な考えていけばその設計士が怪しいよな
でも、証拠もないし潤の今後の事もあるし、事は荒立てたくないな


そんな事を考えいると病室のドアがノックされた