J


       父さん?母さん?
       痛いよ……
       寒いよ………
      暗くて怖いよ………
      なんで返事してくれないの?

―――いたぞっ!まだ子供は意識あるっ!早くっ!

       おじさんは誰?
       父さんと母さん連れて行かないで………
 

 俺の前で幼い俺が泣いている
 あれはあの事故の日
暗くて冷たい土砂の中
母の身体に守られていた

助けたくて手を伸ばそうとするが、届かない
次第に遠ざかっていく光景
聞こえなくなる幼い俺の声…………

暗闇の中、俺だけが取り残されていく…………






K


ピッピッと規則正しい電子音
酸素マスクを付けて穏やかな顔でベットに横になるじゅんくん

頭には包帯を巻き、顔も何ヶ所か痛々しい傷が見える

姉ちゃんから連絡を受けたのが2日前
慌ててしょうさんに連絡をとったが、時差の関係か仕事が忙しいのか連絡がつかない



「潤ちゃん、目覚めた?」

そっと病室に入ってきた相葉さん

俺は首を横に振る


「翔ちゃんと連絡は?」

「まだ………」

「そっか…………」



あの日、駅の階段から落ちたじゅんくんは病院に搬送された
落ちた衝撃でスマホが壊れ、定期券から身元が分かり学校から姉ちゃんに連絡がいったようだ


「足、調子悪かったのかな?」

「あの日、大学で会ってたんです。調子悪そうだったんですけど、気が抜けただけって………」


あの時、問い詰めてたら?
一緒に帰ってたら?

こんな事にはならなかった?


俺の心を読んだかの様に相葉さんが頭に優しく手を置く
その手から大丈夫だと大丈夫だからと相葉さんの気持ちが伝わってくる


その時、俺の携帯が震えた

慌てて病室を出て確認をすれば、画面には『櫻井』の文字

通話エリアに慌てていきタップする


「悪いっ!なかなか連絡できなくっ……」

「しょうさんっ!じゅんくんが」

「潤がどうした?」

「階段から落ちて病院に運ばれて………」

「じ、潤は?」

「まだ意識が戻らなくて………命に別状はありません。」

「そ、そうか………」

「しょうさん、早く帰って来てあげて下さい。
早く帰って来れますよね?」

「なるべく早く帰る。それまで潤を……」

「わかってます……」

電話を切り病室へ帰る

バタバタと走る音が近付いてくる

「にのっ!じゅんちゃんがっ!」

相葉さんの声に慌てて病室に向かう

病室に入ると先生と看護師さんに囲まれたじゅんくん

変わらず鳴り続ける規則正しい電子音に安心する


「………じゅ……んくん?」

ゆっくりとこっちを見て申し訳なさそうな顔をするじゅんくん

「良かった………」

俺はじゅんくんを抱き締めた