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忙しいしょおくんにこんな事で心配かけられない
そう思った

今回のコンテストは図面だけではなく、プレゼンもある特殊な形式だった

プレゼン会場には主催者の方達はもちろん、何名かの審査員の方もいた
実はその中に今回のコンテストの提案者である有名な設計士さんがいたらしい

《W》という名前しか明かさず、メディアに顔を出す事も一切しない
本人を知っている人は本当にごく一部の人
でも、設計の良さと飛び抜けた才能、アイディアの持ち主で世界中に彼の手がけた建物がたくさんある


そんな人に俺は告白された

「最初は設計図をみた時に惚れた
さらに会ってみればこの容姿に甘い声………」

コンテスト以降の仕事の話があると言われて
部屋に通されたら、そう言われた

ニヤリと笑いながら俺の頬を撫でる

「……やめて……下さい」

「これから私の右腕になってもらうのに、そっけない」

「こういう意味での右腕になるつもりはありません」

「みんな最初はそう言うのよ、あなたもいずれ………」

肩から背中、脇腹を流れるように触られた

「次の打ち合わせはおって連絡するわ」

すれ違う時の微笑みにゾッとする

俺はお辞儀をしてその場を立ち去った





しょおくん………
しょおくん…………


しょおくん………大丈夫だって言って
しょおくんの腕でギュッと抱き締めて安心させて


 その日から眠れない日々が続いた






―大学内――――


「じゅんくん、寝てる?」

「うん………」

「俺、姉ちゃんからも翔さんからも潤をよろしくされてるんだよね。」

「だろうねー
   コンテストが落ち着いて気が抜けたかな?」

「それだけ?」

かずの視線が痛い

「うん………それだけだよ」

  講義の始まる時間だからと不服そうな顔をしたまま、かずは戻っていった




あの後、何回も連絡があって誘われているのだが
、どうにか理由を付けて誤魔化している
でも、それも限界そうだよな


大学が終わって考えながら駅の階段を降りる
時間が遅いだけあって人も疎らだ
俺の足には丁度いい

ゆっくりと階段を降りようとした時
背中に何が当たった

次の瞬間、俺の身体は階段を転がり落ちていった

きゃーっと言う叫び声に
早くしろっと怒鳴る声に俺の心が反応する

身体中が痛い
地面と顔の間に生暖かいものが溜まりだす

息が苦しい
どんなに口を開けても空気が入ってこない
バクバクする心臓


しょおくん……たすけてっ

「……しょお…………く………」

俺の意識はそこで途絶えた