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都内とは思えない程の緑に囲まれた立派な門
年代を感じさせるが、しっかり手入れをされているからか趣がある
その門をくぐれば、立派な日本庭園
ここは都内だよな?と確認したくなる
「しょうちゃん…俺たちなんかが泊まっていい旅館なのかな?」
「立派だよな。まさかこんな立派だとは俺も思わなかったよ」
尻込みする俺たちをよそに、ニノは慣れた感じで玄関に向かっていく
俺たちも慌ててその後を追う
檜の匂いが漂う広い玄関
綺麗な着物を着た潤のお姉さんが迎えてくれた
「ようこそお越し下さいました。
若女将のひまりと申します。」
お姉さんのお辞儀に揃えるように後ろに並ぶ従業員の方々がお辞儀をする
顔を上げたお姉さんはニコッと笑うと
「いらっしゃい、かず」
若女将としてではなく、潤の姉として迎えてくれた
「お世話になります。櫻井と相葉です。」
「先日は潤がご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。
今日はゆっくりしていって下さいね。」
「はい、ありがとうございます。」
玄関を上がり案内された部屋は10畳はある和室
が2部屋
奥には寝室として使うこれまた、10畳以上はある洋室のなかにベットが2つ
窓から見える景色も素晴らしいもので、ほんとにここに泊まっていいのかと、益々、不安になる
「な、ニノ………大丈夫なのか?」
「なにがですか?」
「こんなとこに俺ら、泊まって大丈夫なのか?
いくらするんだよ?」
「しょうさん、じゅんくん家の旅館、老舗中の老舗なんです。姉ちゃんがもう8代目くらいの女将なんじゃないかな?」
「はっ?8代目?」
「そうそう。だから普段ここを使うお客様もそれなりの方々ですよ。」
「や、やっぱり場違いだよ~~~ニノちゃーん」
もう、雅紀は泣きそうだ
「雅紀が泊まりたいって言ったんじゃん。
大丈夫ですよ。
ここは離れだし、露天風呂も部屋についてますから、誰かに会う事もないし、失態を晒す事はないでしょう」
「失態って……ニノちゃん………」
あーだこーだと騒いでいるうちに部屋がノックされた
「失礼致します。お夕食の準備させて頂きます」
お辞儀をして数名の仲居さんが夕飯の準備をしてくれる
机いっぱいに並べられた豪華な料理
「すげー」
俺と雅紀はさっきから驚きっぱなしだ
「ね、ね、しょうちゃん、ここって1泊いくら?俺たちに払えるかな?」
確かにその辺の旅館なんて比べものにならない程、まさに一流旅館
不安になる雅紀の気持ちもわかる
「その辺は気にしなくて大丈夫ですよ。姉ちゃんの奢りですって。
いつも潤がお世話になってる櫻井さんですから、って」
「お、おれっ?」
「俺でもなく、もちろん雅紀でもなく、櫻井さんだそうですよ」
「はぁ………」
「気風のいい姉ちゃんなんで、お言葉に甘えましょう。じゅんくんも落ち着いたら来るらしいですから」
なんだかよくわからないが、宿泊代の心配はないらしい
俺たちは美味しい料理に温泉旅館独特の雰囲気を楽しんだ
「あー、食った――――」
仲居さんたちがこれまた、見てたのか?というタイミングで料理を下げに来てくれて、今、俺たちは膨らんだ腹を抱えて横になっている
「ニノちゃーん、美味しかったねー。刺身なんて最高だったよー。初めて食べる魚とかもあったし」
「……ちょっと、今までと料理が違いました。板長さん変わったのかな?」
トントンと襖をノックされる
返事をすると現れたのは潤だった
「お夕飯、いかがでしたか?お口にあいました?」
「うん、美味かったよ。まさに豪華絢爛」
「いや、そこまででは……」
「いやいや、食べた事ないもんばっかりで雅紀と興奮しっぱなしよ」
「良かったです。」
「じゅんくん、板長さん変わった?」
「あっ、かず、わかった?」
「うん、なんとなく違うなぁって」
「俺も帰ってきてから知ったんだけどね、実はさ………姉ちゃんの恋人なんだよ、新しい板長さん」
「まじっ?!」
「今までの板長さん、ずっと無理言って続けてもらってたらしくてさ、タイミングだったのかな。
まだ、若い人なんだけど知識もすごいし、手際もいいし、元漁師だからいろんな魚料理も作れてね。姉ちゃんも、旅館の人たちも料理の幅が広がって良かったって」
「へぇー、あの姉ちゃんに恋人ねー」
「ねー、でも姉ちゃんには幸せになって欲しいし、話してみたらいい人で安心した」
「そっか、次はじゅんくんだね」
「おっ、おれ?ま、まさか……かず?ちょ、ちょっと来い!」
また、部屋の隅でコソコソ話すニノと潤
せっかく潤と会えたのに
俺も話をしたい
あの手を握りたい
頭を撫でてやりたい
あの瞳に映りたい
やっぱり恋なんだなぁ、これ
俺、潤に惚れてるんだ