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俺としょおくんが出逢ったのは数年前

まだ、俺が大学1年
しょおくんが大学4年の時だった

俺は自分の障害のこともあって、同じ様な方が快適に暮らせる空間を創る事をしたいと思っていて

高校もがむしゃらに勉強して、高校ではめずらしく建設や設計に特化した学科がある高校に進んだ

大学も同じで建築や設計を学べる学科を専攻にした

その大学で中学校卒業以来会ってなかった、カズと再会したんだ

中学の頃はかずの両親が
「息子が1人増えても同じ。まして娘までできるなんて!」と喜んで
旅館の方に人手を割いてしまう松本家のかわりに自分の子どものように育ててもらった

かずとは幼なじみより兄弟に近いかな


大学で再会したかずはずっと俺のやりたい事をフォローしていきたいと、経営学の専攻だった


そんなかずに

「ぜひ、じゅんくんに会わせたい人がいる」

と、いろいろな大学のやつらからなる討論会のような集まりに参加してみないか?というお誘いだった

まだまだ、修行中の身
いろいろ人の意見を聞いたり、話したりするのは興味がある

が、しかし、人見知りの傾向の強い俺
そんなとこに行けるのだろうか?


幼い頃から俺を知っているかず
ニヤリと笑うとグッと腕を掴まれ強制連行決定

連れて行かれた先は普通の居酒屋

「こんばんはー」

かずが扉をカラカラとあける

「おー、きたきたっ!うちの若手っ!」

「あれ?見ない顔だね」

「なに?なに?ニノの彼女?」

あちこちから新参者に刺さる興味の目線

俺の心が保てるはずがなく、徐々に手が震え、青ざめていく

「じゅ、じゅんくん!」

遠のく意識の最後にかずの声が聞こえた気がした




「あっぶねぇー」

硬い床ではなく、逞しい腕の感触
冷たい床ではなく、暖かい胸板

に、抱きとめられた

「大丈夫か?酔っ払い……じゃねぇよな。」

「は、はいっ!はっはっは………初めまして!………って…………やばっ」

頭を下げようとして目眩に襲われまたもや支えられるという大失態

あー、これはまずいパターンかな?
こんなやつ、使えねーじゃんってまた言われるんかな……

上を向けないでいると、下から覗きこまれた

「俺、櫻井翔。大学4年。とりあえずここの代表なっ!」

「ニノの友達?こっち方面に興味あるの?」

近場の椅子に座らされ、おしぼりで首筋を冷やしてもらいながら、俺は初めて櫻井翔の顔を見た


「うぅわぁ、賢そうだし、かっこいいし、モテそうだなぁ~」

なんて思ってたら

「いやいや、モテないのよ、これがっ!」

「えっ?」

「デカいね、独り言?心の声ってやつ?」

「す、すみません!」


また、勢いよく頭を下げそうになって止められた

「また、クラクラしちゃうって!」

そう言って俺を立たせてくれて、みんなの集まり中に入っていったんだ


そこは不思議な程、居心地がよくて、人見知りの俺でもスムーズに馴染めた

大学も年代も性別もバラバラだけど、将来、自分の手で起業したい、こんな仕事があってもいいんじゃないか?と熱く語り合う反面、日頃のバカ話で笑い転げたり、誰かの失恋話にはみんなで涙したりと、なんに対しても熱く一生懸命な人たちの集まりだった

「なんで、かずはこんなとこ知ってたの?」

かずはどちらかと言えば、つるむのを嫌がる

「しょうさんに誘われたんだよ。俺、同じ高校だったからさ。たまたま、自分で起業したいって話した事あってさ」

「へぇー」

じっと櫻井さんを見つめていたらしく、可愛く小首を傾げて手招きされた

「じゅんくん、帝王がお呼びみたいですよ」

「て、てっ帝王………?」

「そっ、うちの帝王」

そういうかずの顔は何かを企んでいそうだったが、先程のお礼もまだだったと気付いた俺はしかたなく、帝王様のお呼びに従うのであった