研ぎ澄まされていく 心技体
余分なものを そぎ落とすほど
人が強くなるように
落としていって 無くなるごとに
彼の中に入っていく 何か
研ぎ澄まされて 見えてくるのは
磨き足りない 空白のすき間
置かれたままの そのすき間を
彼は 削り落としていく
空白が 無空に変るとき
その時 何かが起きるのか
その先を 知る者はないが
シナリオを 神々がもっている
不安を煽る声も 興味の視線も
向こうの岸辺の 要らない風景
応援と祈りだけは 届くだろう
世界中の空から 彼のもとへ
彼の中にある恩返し
あまねく光を 届ける思い
その日そのときが やってきて
氷の上に立ったなら
誰かのためとか みんなのためとか
そんなことばも なくていい
その時だけは その想いさえ
離して いいのだ
残っていた 最後のすき間を
彼は 削り落とすだろう
羽生結弦が 背負ってきた
すべてのものが そこでは消えて
氷と曲と それ以外
彼の前には 何も無く
スケートと 羽生結弦との
すき間がなくなり
無空の中の 羽生結弦が
私の中で もう舞い始めている
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