第8話*小説『14歳の積み木』 | jun2980さんのブログ

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        第8話


次の日の朝、すでに野口怜那は教室の自分の席に着いていた。

早川舞子は怜那より早く登校していた。

いつも、怜那が教室に入ってくると、舞子は怜那の元へ駆けてやってくる。

しかし、今日は自分の席に座ったまま、目も合わせず妙によそよそしかった。

始業ベルが鳴る少し前に、岡田理沙が教室に飛び込んできた。

怜那を見てVサインを送りながら、理沙が自分の席に座った。

怜那も微笑み返した。

一時間目は怜那が最も得意とする歴史だ。

授業は鎌倉時代から足利尊氏が開いた室町時代に移る。

怜那はすでに教科書は読んであった。

15世紀中ごろ、北海道の先住民であるアイヌ民族が和人に対して蜂起し、戦った、という記述が気になっていた。

そもそも、アイヌとは「人間」という意味だということだ。

アイヌの人たちは北海道を「アイヌシモリ」、つまり、「人間の土地」
と呼んでいる。

アイヌの人たちが本州との貿易が進むなかで、本州から渡ってきた和人が、アイヌの人たちを圧迫するようになる。

怜那がそこまで、確認していたときだ。

理沙が「ヒェー」と叫んで、椅子から飛び退いたのである。

「冷たーい」

理沙が車ひだのスカートをパンツが見えるほど、上に上げて飛び跳ねたた。

その姿は誰の目にも滑稽に見えた。

「キャー。岡田さんパンツ見えてるよ」「どうしたの?」「オシッコ漏らしたの?」

異口同音に教室の中で声が飛び交っている。

大きな口を開けて笑っている者さえいる。

怜那は理沙のところへ駆け寄った。

当然、舞子も駆け寄ってくると思ったが舞子は自分の席から動かなかった。

「理沙、何が起きたの?!」

「れいなー」半泣き状態だった理沙は怜那の顔を見ると、大粒の涙を流した。

すぐに事態が飲み込めなかった怜那だったが、やがて、理沙のスカート
の後ろの部分が濡れているのが分かった。

怜那が見ると、理沙の椅子の座布団がビジョビジョに濡れていた。

誰かが故意に座布団を水浸しにしたのが、明らかに分かった。

理沙が座ってしばらく、ジワジワと水が浸透してきたのだ。

怜那はすぐに察した。

前川美紀の仕業に違いない。

昨日の仕返しをしたのだ。

「怜那、気持ち悪いよ」

理沙は泣きじゃくっている。

そこへ、クラス担任の相葉百合子先生が出席簿を持って教室に入ってきた。

ただならない事態を見て、相葉先生は急いで理沙を保健室に行かせた。

保健委員が連れて行ったので、怜那は自分の席に戻った。

怜那が窓側の一番後ろの席の舞子に目をやると、舞子は窓の外を見ていた。

怜那は混乱していた。

舞子は私と理沙を裏切ったのだろうか。

怜那は舞子の行動が理解できなかった。

相葉先生はクラス全体をぐるりと見渡した。

相葉先生は深呼吸を一つしてから、

「誰ですか?岡田さんの椅子の座布団を水浸しにしたのは」

幾分、声が震えているのが分かった。

いつもの長いまつげで縁取られた優しい瞳は、今は険しかった。

「これは、いたずらですか?いじめですか?」

みんな下を向いている。

誰も何も言わない。

怜那にしたところで、何も言える訳がなかった。

「いたずらといじめの境界線をみなさんは、分からない年ではないですよね」

相葉先生の厳しい声が飛ぶ。

「岡田さんの座布団を水浸しにした人は、後からでもいいです。先生のところに言いに来て下さい」

みんな押し黙っていた。

理沙は下着まで濡れてしまった。

学校に常備されている下着に履き替えたが、生憎スカートはなかった。

理沙はバスタオルを腰に巻いて、教頭先生に車で送ってもらい帰宅した。

舞子は明らかに変だった。

結局、その日は舞子は怜那と目を合わせなかったし、口も利かなかった。

舞子のそんな態度に怜那も気まずい思いを持ってしまっていた。

怜那は陸上部の練習に出るのが気が重かった。

しかし、大会まで1ヶ月を切っている。

怜那は更衣室に行かずに、トイレで着替えをした。

その方が気が楽だった。

怜那は前川美紀に怒りを覚えていた。

美紀が「座布団水浸し事件」の首謀者だという証拠は何もない。

だが、怜那には確信があった。

美紀以外にそんなことをするはずがない。

トイレで着替えを終えて校庭に出て行った怜那を待ち構えていたように、怜那の両側に美紀と内山信子が寄ってきた。

「今日は金魚のフンちゃんはどうしたの?」

美紀は言葉に不快感が粘りついているような嫌らしい言い方をしてきた。

「金魚のフンちゃん?誰のこと?」     

怜那にはそれが理沙のことを言っていることはすぐに分かったが、わざと言い返した。

「またまた、とぼけちゃって。今日、お漏らしした子よ」

信子が含み笑いをして答えた。

怜那は切れ長の目の奥にひそむ眼光を鋭く美紀に放った。

怜那は何も言わずに、その場から離れると、ウォーミングアップを始めた。

美紀は怜那の冷静さが気に入らなかった。

怜那が邪魔だった。

怜那さえいなければ、自分だけが注目されるのにと思うと、怜那の存在が腹立たしかった。

           つづく

最後まで読んでくださりありがとうございます。

コメントをいただけたら嬉しいです。

          愛川るな 



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