第31話小説『私は私~I can be me.~』 | jun2980さんのブログ

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     第31話


吉永君からの電話は私を驚かせた。

しかも、松村から手紙が届いていたなんて。

私はとにかく直ぐに松村の手紙が読みたかった。

そういう意味で、吉永君に会いたかった。

では、どこで会ったらいいかとなると、考えてしまった。

前に吉永君と話したあの公園は、常盤靖子や浅井刑事が見張っているようで嫌だった。

私は思い切って、家に来てもらうことにした。

母は私のすることに、いちいち関心を持って干渉してくる。

しかし、何かあると世間体を一番に気にして、私のことは二の次になる


だから、人はみな、母のことを『利口な人』『良い人』と評価する。

人が言うのだから、そうなのだろうと思っている。

でも、時々、母がとても嫌な人間に思える時がある。

いつだったか、父が部下を数人、家に連れて来たことがある。

酒や料理のもてなしを愛想良くし、母は誉められていた。

母もすこぶる機嫌が良かった。

でも、次の日。

母が言った言葉はにわかには信じられなかった。

それは昨夜、父がお客様を招いて開かれた酒の宴の場所になったリビングを、母が綺麗に掃除した後に発した言葉だった。

「家に誰も来なければいい」

驚いて母の顔を見ると、私は疑問を投げかけた。

「どうして!?」

「家が汚れるから。誰も来なければ家の中を掃除したまま、綺麗なままでいられるでしょ」

私は同意出来なかった。

昨夜、父のお客様を笑顔であれだけのもてなしを、母はしておきながら、どうしてそんな淋しいことを言うのだろう。

私が幼稚園の頃、外へ遊びに行って砂や土を体のどこやらに付けて帰って来ると、母はがっかりした顔で私を出迎えた。

まず、玄関で私の体から、洋服を剥ぎ取った。

私が嫌がると、「わがままを言わないの!」と、母の決まり文句で怒られた。

私は楽しいことをして帰って来た。

だのに、なぜ母は機嫌が悪かったのか、その時は理解出来なかった。

でも、今なら分かる。

要するに、部屋が汚れるのが嫌だったのだ。

私は友達が来てくれた方が、部屋が綺麗になる。

誰も来ないのなら、多少、部屋が汚れていても気にならない。

すると、母は決まって、私のことを
「だらしない」と、叱った。

私は私。

どうして、いちいち、言われるのだろう。

息が詰まりそうになる。

私は吉永君を迎えるために、部屋の掃除を始めた。

ベッドの下にモップを入れて、ぐるりと回して掻き出すと、綿ゴミがモップに絡みついてきた。

私はこの自分の部屋に初めて男子を招く。

それが、松村ではなく吉永君であることが皮肉だった。

ベッドの上のカバーを整えながら、ベッドの上に吉永君を座らせることが嫌だと思った。

私はミラーチェストの前で使っている円椅子をベッドの前に置いてあるテーブルに添えた。

間もなくして、吉永君は息を切らしながら、やって来た。

私は吉永君に自転車で来ないことを提案した。

私の家の横に吉永君の自転車だと分かる奴に見られたら、また、あれこれと言われるだろう。

常盤靖子の顔が思い出されて、うっとうしく思えたからだ。

吉永君は汗だくになりながら走って来たらしい。

清潔な汗の匂いがした。

玄関で母は愛想良く、吉永君を迎えた。

私は事前に吉永君が来ることを、母に知らせなかった。

吉永君にも吉永君が自分の意思で、私の家に来たことにしてもうように頼んだ。

母は吉永君の礼儀正しさを認め、また、笑顔にも好感を持ったようだった。

吉永君は緊張した様子で、私の部屋に入って来た。

無礼な感じで、部屋の中を見渡すこともしない。

私が示した椅子に座り、テーブルを挟んで私は学習椅子に座った。

私達の空気は深刻だった。

やがて、母がオレンジジュースを運んで来た。

来ることが分かっていたから、吉永君にも、まだ、松村からの手紙を出さないようにと、伝えた。

久保先生が亡くなり、クラス委員の吉永君と私が深刻な顔で会っているのだ。

母も気を利かして、部屋から出ていった。

私は吉永君から、松村の手紙を受け取った。

右上がりの字が遠い記憶にあった。

         つづく

久しぶりの小説の更新です。

見放さずに、最後まで読んでくださり、感謝いたします。




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