第4話
母の声は驚いた声を上げ続けていた
。
私はうんざりしてきていた。
電話が終わった後、まず、私がなぜすぐに松村のことを、教えなかったのかと、責めてくるだろう。
私はこの場から失踪したかった。
部屋に私は静かに戻った。
ベッドの上に放置されていたスマホをチェックしてみたが、杏からは、
何も情報がなかった。
ふと、吉永君なら何か分かっているかもしれないと、思った。
別に確たるものがあったわけではない。
ただ、松村が中学一年の一学期まで吉永君が友だちだったはずだからだ
。
松村も吉永君も背が高かった。
確か、あの頃松村が165㎝で、吉永君が松村より、1㎝高かったはずだ
。
今はどうなっているのかは分からない。
今年の春、吉永君が去年より5㎝伸びたとかで、クラスの女の子たちがキャーキャー言っていた。
松村は小学校のとき、私より背が低くかった。
それなのに、私を20㎝は追い抜かしてしまった。
松村と吉永君はその体躯をいかして
、二人共、バスケットボール部に入部した。
二人共、格好良かった。
でも、一年生の2学期が始まった時
、松村は退部をし、吉永君は一年生でありながら、活躍しいた。
スマホのメールを知らせるバイブ音が、ひっきりなしになり始めた。
開くと、クラスの女の子たちからだった。
もちろん、内容は松村について、知っていることを教えてくれと、いうものだった。
それは、クラス委員の私が誰よりも
早く情報を知っているという、勝手な憶測からきていることに違いなか
った。
多分、同じように、クラス委員の吉永君にもそんなメールが届いているだろうなと、思った。
私の部屋のドアが遠慮なく、電話が終わった母によって開けられた。
前置きは想定通りだった。
ーなぜ、直ぐに教えなかったのか。
ー信子ちゃんのお母さんから、電話来なかったら、知らないところだった。
電話の相手が信子のお母さんと聞いて、納得した。
いわゆる、信子も信子のお母さんも放送局というやつだ。
私と信子はクラスが違ったが、松村を好きらしい信子に、何かとつらく当たられ、よく廊下ですれちがいざまに睨まれていた。
ー明日、学校で説明会があるらしい。
私が適当にやり過ごした後で、母は深刻な顔で言った。
「賢介君、警察で取り調べを受けたけれど、家に帰されたらしいわよ。心細いでしょうね。賢介君がお母さんを階段から突き飛ばすなんて、そんな恐ろしいことをするはずがないわよね」
その時だった。
着信音のバイブ音がなった。
私は母に席を外してくれるように頼んだ。
「誰から?」
「吉永君」
「何だって?」
勢い込んで聞いてくる。
「分かるわけないでしょう。早く出て行って」
母は不服そうに出て行った。
階段を下りて行く母の足音を確かめると、スマホを耳に当てて、低くい声で吉永君であることを確かめた。
「吉永君?」
「高山さん?」
私はさっき母親から聞いたことを、居てもたってもいられなくなり問いただした。
「松村君、お母さんを階段から突き飛ばしたの?」
少し、間があった。
そして、吉永君の落ち着いた声が返ってきた。
「それは僕にも分からないよ。でも
、賢介はそんなことはしない」
「そうよね。そうだよね」
私は吉永君からはっきりとした保障が欲しくて繰り返し聞いた。
女優になるのなら、こんな風に動揺してはいけない。
松村に好意を寄せている私の気持ちを、相手に気付かれてはいけない。
いつでも、冷静にしていなくてはと
、言い聞かせているつもりだったが
、松村のことになると、取り乱してしまうのだった。
「ねえ、吉永君。松村君のことでもっと、何か知っていることないの
?もっと詳しい情報はないの?こんなんじゃ、不安だよ。なんで、こんなことになっちゃうの。なんで?」
私はたたみかけて叫ぶと、嗚咽を漏らしたのだった。
つづく
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