それは暑い夏の昼下がり…
イチはおもむろに布団から起き上がる。
意識は朦朧としながらも、まず朝イチのタバコに火をつけ
吐き出した最初の「副流煙」とか言う奴が
狭い部屋を覆い隠すかのごとく辺りを包み込むと同時に
…ハッとする…
昨夜遅くまで…
正確には今日の早朝まで盛り上がった自身がギタリストとして名を連ねるバンドの東京では初主催ライブの余韻に浸りながら着替えもせず眠りについていたことを思い出しのだ。
それと同時に、また昨夜の余韻も蘇る…
風呂に入ろうかと一瞬迷ったが、
すぐにその迷いよりも、昨夜の興奮を思い出したくなり
「ギターはやっぱ大切なんだな…」と苦笑いを浮かべながら
ギタースタンドにキチンと立てかけてあるギターを手に取り
お得意のフレーズを刻み出す…
何度も、何度も、
イチの思考は張り巡らされる…
昨夜の興奮
自分に向けられる声援
みんなの笑顔
何より…
自分が今までに無いくらい笑ってた…
「なんで…俺ここにいんだろ……?」
フッと思考が停まり
また動き出す…
きっかけを思い出そうと…
今…在る自分のきっかけ…
張り巡らされた思考がハタと立ち止まる。
「アレだ!」
「きっとあの事件がきっかけだ!」
気がつけばギターの手は止まり
思考があの頃を鮮明に導き出す…
忘れもしない、あの頃を…