あるところにしんちゃんという男の子がいました。
その子は一人息子だったので、お父さんとお母さんからとても可愛がられていました。
でも、ある日、しんちゃんには弟ができたのです。
弟が生まれてからというもの、両親の愛は弟の方ばかりに向いていきました。
そんな光景を見て、しんちゃんは弟のことを憎らしく思っていました。
けれど、とある日、弟は交通事故で亡くなってしまったのです。
すると、また両親の愛はしんちゃんの方に向きました。
しんちゃんは、また幸せな日々を過ごしました。
ですが、しんちゃんには妙な幻聴が聞こえるようになったのです。
「しんちゃん まえ しんちゃん まえ」
と、弟の声で。
出かけているときも、ずっとその声が聞こえていて、しんちゃんは気味が悪くなってきました。
そして、その声に気を取られていたせいか、思わず道路に飛び出してしまったのです。
その時でした。
「しんちゃん まえ!!!」
弟の声が思い切り大きくなり、しんちゃんは思わず動きを止めました。
すると、自分のすぐ目の前を、車が横切っていったのです…。
「ああ、弟はずっと僕にこれを気づかせてくれるためだったんだ。今まで憎く思っていてゴメンよ」
―ですが、幻聴はいっこうに消えることがありません。
そしてよく聞くと、―…「しんちゃん 前」とは言っていないようなのです。
そうです、弟はこう言っていたのです…。
「死んじまえ」