「彼」が、死んだ。
サヨナラも言わずに 1人で逝ってしまった。
何故? どうして?
半年前に会った時は、あんなにお茶目で元気に笑っていたのに。
アイスココアに浮かぶアイスクリームを欲しそうにしていたら黙って全部くれた。
「言わなくてもわかるよ。」ってニコリとして。
同級会に行く時も「みんなを驚かそう。」って、手を繋いで、店に入って行ったっけ。
「お酒飲みすぎちゃダメよ。」っていつも言ってたのに。
警察官の話では、家の中は、何から何まで綺麗に片付けられていたという。
まるで自分の死期を知っていたかのように。
一緒にお墓参りに行ったのは、「僕は、ここで眠るよ。」という合図だったのか。
「遠い星から来た王子様」が、「遠い星」へ1人で、帰ってしまった。
サヨナラも言わずに。
誰にも何も言わずに。
いつかあげた「Yesterday Once More」の小さなオルゴールのメロディーが、囁くように聞こえた気がした。
「ごめんな」
雨の葬儀。「彼」と「私」の涙雨だったのか。