ゲゲゲのブラック次元 -80ページ目

ゲゲゲのブラック次元

コッペパンと妖夢が好きなゴクウブラックと
罪のない人間と海砂に優しい夜神月と
色物揃いで最強の部下たちを従えるリボンズ・アルマークが
存在するカオスな次元です

~黒羽邸~

 

早朝、オレはカーテンを開けると無数に空から降り注ぐ雫達を目にする。 

「うっわ、雨かよ……」

下に下りるといつものように金奈子が朝食を用意をして待っていた。

 

「晴斗様、朝御飯の準備が…」

「ん…?」

 

“朝御飯”と称される豪華ディナーが長いテーブルに並べられている。

 

「おい…なんでこんなに作ったんだ?」

「今日は少し多めにと仰ってたので」

(あー…そういやそんなこと言ったっけか……)

「朝っぱらからこんなに食えるわけねーだろ!バカか‼」

「えっ…⁉」

「お前はいっつもオレ1人じゃ食べきれないくらいの朝飯作ってるよなぁ⁉朝なんて目玉焼き、ベーコン、ウインナー…あと卵か納豆かけたご飯か?そんだけありゃ十分なんだよ」

「……金奈子、お前将来はウチのメイドになりてぇって言ったよな?」

「は…はい……」

「正直言わせてもらうけどよ、お前みてぇな融通の利かねぇメイドなら…要らねぇよ」

「……⁉」

 

オレはそう吐き捨てるように言って金奈子に背を向けその部屋を出ようとしたが、凍り付くような悪感に背中を突き刺され、振り返らざるをえなかった。

 

「……⁉」

 

振り返ると金奈子が虚ろな目から涙を流している。

 

「ごめんなさい…余計なことばかりして…本当にごめんなさい……!」

「そんな本気で真に受けないでくれよ……。いや、真に受けるにしても泣くことないだろ?」

「晴斗様に要らないと言われたなら…私なんて生きてたって何の意味もないから……」

「……⁉」

 

涙を流し潤んでいるはずの目には一点の光すらなかった。

金奈子のこんな目を見たのは久しぶりだった。

 

「……金奈子、オレはメイドなんか要らないって言っただけで、お前のことが要らないとは言ってないだろ?な?だから安心してくれよ。お前のこと嫌いになったわけじゃないからさ」

 

こんな上から目線な、励ましてるのか励ましてないのか分からない言葉しか掛けられない自分が情けない。

だが、こんな状態の金奈子に掛けてあげられる言葉なんて浮かびようがなかった。

 

「晴斗様……」

 

金奈子の目に光が戻った。

こんないい加減な言葉で立ち直ってくれるんだから、本当にいい娘だなと思うし、申し訳なくなってくる。

 

「お前の料理、世界で名が売れてるシェフ顔負けだもんな。食える分だけ食わせてもらうよ」

「ありがとうございます…晴斗様」

「……いちいちツッコむのも面倒だから最近は言ってないけどよぉ…“様”づけはやめてくれよ。お前の父さんがオレの父さんの付き人だからって、娘のお前までオレに畏まる道理はねーだろ」

「もちろんそれは関係ありません。でも私にとって貴方はそう呼ぶべき人なんです、晴斗様」

 

月に2、3回くらいしか見られない金奈子の朗らかな顔……学園の連中に見せたらとんでもない破壊力だろうな。

 

「ったく…勝手にしろよ」

~エクシア学園~

 

「お疲れ様です‼」

 

門の周辺にはタキシードを着た集団が待ち構えている。

オレと金奈子に綺麗なお辞儀で迎えてくれるが、いつものことなので返事はしない。

 

彼らは外海金奈子ファンクラブ『金皇会』。

その名の通り外海財閥の令嬢である金奈子、そしてその美しさを崇め讃える組織であり、構成員は金奈子のことを“姫様”と呼ぶ。

この学園都市の生徒は愚か、表沙汰にはなっていないまでも政財界にまで勢力を広げているらしい。

 

「今日は天気も足元も悪い中、当学園に足を運んでいただき、身に余る光栄です。お嬢様」

 

土門柏雄(38)

エクシア学園校長

 

「校長、確かにここは外海グループの系列だけどよ……一応金奈子もここの一生徒なんだぜ?

たまには生徒扱いしてやれよ」

「おっ、あーいやすまんすまん」

 

このエクシア学園を含んだ四つのエリアからなる巨大学園都市『ソレスタル』は外海財閥傘下である。

~教室~

「よぉ晴斗、相変わらずシケた面してんなぁ」

 

黄崎光太郎(16)

エクシア学園高校1年

 

「うっせーよ、こんな天気で陽気になれるか……。んな事より先週奢った飯代2倍にして返せ」

「ハァ⁉何で倍増してんだよ」

「1週間以内に返さなかったから延滞料金だ」

「ざけんな‼そんな暴利通るかよ‼」

「は?テメ舐めてんじゃねーぞ。借りたもんを返すなんてガキでも知ってるぜ」

「お前なぁ、金持ちのボンのクセして善良な凡人から金巻き上げんのか」

「金奈子ん家と違って、ウチは父さんが奇術で荒稼ぎして小銭持ってるだけの極普通の一般家庭だよ」

「デケー敷地の中にあるデケー屋敷に住んでるテメェみてぇな一般人がいてたまるか‼

……ったく、ところで晴斗、もう高校性になったんだしそろそろ金奈子ちゃんと付き合い始めてもいいんじゃねぇか?」

「へっ、誰があんなガキっぽい顔した女と付き合うもんかよ」

「金奈子ちゃんがいねーと何もできねぇクセに」

「あ?」

「聞いてるぜ?お前小3の頃まで金奈子ちゃんと一緒じゃねーと寝れなかったんだってな」

「げっ⁉おま、それ誰から…」

「金奈子ちゃんがオレに話してくれた「晴くんとの心温まるエピソード」の中に入ってたんだ」

「あのアホが…!」

「まあ待て、オレの方から訊かせてもらったんだ。金奈子ちゃんを責めるなよな」

「あいつは口が軽過ぎんだ!」

「金奈子ちゃんを怒る気なら俺を殴りな。俺にも責任がある」

「オレにも、じゃなくてお前の所為だろ」

「だからオレの顔に免じて金奈子ちゃんは許してあげてくれよ」

「……けっ、その間抜け面に免じて許してやるか。その顔がそれ以上崩れたら流石にオレの良心が傷付くからな」

「顔を殴る気だったのか⁉」

「そこ以外何処殴れってんだよ」

「頭とか腹とか他にもあるでしょうが!」

「あそっか、じゃあ殴るのは汚ねぇから蹴りで金玉を…」

「例えだ!やっていいとは言ってねーぞ‼」

「ただでさえ出来の悪い頭を殴ってこれ以上悪くなったら気の毒だし、腹殴ってゲロでも吐かれたらオレも危ねぇし、そこ以外攻撃するとこないよな?どうせ使う機会ねぇだろ?」

「チェッ、いいよなお前は…金奈子ちゃんみたいな可愛い彼女がいてよ」

「コラ、テメ、勝手に羨ましがってんじゃねーぞ。オレと金奈子は普通の幼馴染で、それ以上でもそれ以下の関係でもねぇ!」

「うわ出たよフライデーの漫画に有りがちな台詞……いつでも彼女に出来る子がいながら恥ずかしがって意地でも付き合おうとしない奴!そう言う度胸のねェ態度が気に入らねぇっつってんだよ、こん畜生が‼金奈子ちゃん程の完璧美少女の何処が不満だってんだよ、あん?」

「……いや、お前の言う通り正直不満はねぇよ」

「じゃあなんで付き合わないんだ?」

「だって金奈子はオレの父さんの付き人の娘だぜ?例えるなら王子と、大臣の子供だ。オレは相手と対等の立場じゃねぇと付き合っちゃいけねぇ気がするんだよ。どうしても無意識に金奈子のことを下に見ちまうんだ……」

「分からないな…どうしたらそんな贅沢な悩みが出来るのか教えてほしいよ。だったら死ぬまで悩んでろ。テメェなんか一生童貞のまま天涯孤独で死にやがれ‼」

 

黄崎は掃除道具を家付け教室から出て行く。

 

「ガキかよ」

 

~廊下通路~

「けど黄崎の言う通り、このままじゃマズいよなぁ……

オレが王子とするなら金奈子は大臣の子…つっても、オレにとっちゃ金奈子は姫同然だからな……」

 

(回想)

半年前、オレと金奈子は2人で母さんを見送った。

 

「じゃあ、お母さんしばらく旅行に行ってくるけど、2人で仲良く頑張ってね」

「へいへい、なんなら一生帰って来なくったっていいからよ」

「お気をつけて」

 

金奈子は深々とお辞儀をする。

 

「晴斗…いくら2人っきりだからって金奈子ちゃんに妙な事したらただじゃ置かないからね?」

「間違ってもんな事ねーから安心しな」

(回想終了)

 

「とは言ったものの……あの金奈子と同じ敷地内に2人っきりで住んでて妙な気起こさない方が、無理ってもんだよなー」

 

赤ん坊の頃からの幼馴染で慣れてるとは言っても、流石にあれだけの美少女だとどうしても男の本能を擽られてしまう。

金奈子の生まれながらのオーラは凄まじいもので、園児の頃から男子達をその美貌の虜にしていった。

そんな金奈子と物心つく前から一緒にいたおかげで…オレはこの16年間、他の誰にも恋をすることがなかった。

 

「オレ…たぶん誰よりも金奈子のこと好きなんじゃねぇかな……」

 

金奈子の事が好きな男なんてごまんといるが、生まれた頃からずっと一緒にいる男として、オレの金奈子への愛は誰にも負けないつもりだ。

 

「なのにオレは、なんであの娘に優しくしてあげられないんだろうな……」

~ベルツリータワー~

 

「闇夜に鉄の烏が5羽…おおっとっとw装甲車まで用意してやがる!流石警視庁♡気合入ってんじゃねぇか!」

「お止めください晴斗坊ちゃま!今回のやま、何か妙な胸騒ぎがします…もし坊ちゃまの身にもしものことがあったら、このセバスチャン、先代キッドであられる快斗様になんと申し上げればよいやら…」

「ったく、セバスチャンはでかいやまとなるといっつもこれだぁ…勘弁してくれよ…」

「ですが、晴斗坊ちゃま…」

「それに言っとくが、今夜のオレはアンタが付き人を務めている世界的マジシャンの息子でも、高校1年生の晴斗坊ちゃまでもない。今世間を騒がせている‼」

 

シルクハットから撮み出したマントで全身を覆い、怪盗キッドに変身する。

 

「…キザな…悪党だよ…」

「晴斗坊ちゃま…」

「さてそろそろ行くとするか!狙いはビッグジュエル…ラグナロク王朝の至宝『白銀の果実-シルバーカムリ』」

「坊ちゃま、快斗様がお父上の黒羽盗一様から常々仰られていたそうです。客に接する時、そこは決闘の場、決しておごらず侮らず、相手の心を見透かし、その肢体の先に、全神経を集中して、持てる技を尽くし…なおかつ、笑顔と気品を損なわず…」

「いつ何時たりとも!ポーカーフェイスを忘れるな…だろ?」

 

オレはハンググライダーを広げ、ベルツリータワーから飛び立って行った。

~デュランダル博物館~

 

「よっと」

 

天上から宝石の入ったガラスケースの上に着地する。

 

「フンッ、警察の奴等はやはり暗号を解けなかったらしいな。米花総合博物館に偽物を展示しておいて、このデュランダル博物館に本物のシルバーカムリを移し替えている事を私が見抜けないと思っていたのか?

折角それを見抜きこちらに来ると予告上に記しておいてやったと言うのに…少し暗号を難しくしたらもう解けなくなるとは情けない」

 

私はガラスケースから降り、ニヤリとほくそ笑んだ顔でガラスケースのロックを解除し、シルバーカムリを手に取った。

 

「フッ」

「それはどうでしょう?」

「……⁉」

 

何者かが私の手に取っているシルバーカムリを銃弾で弾き飛ばし、シルバーカムリをキャッチする。

 

カチャ

 

展示室の明かりがつく。

 

「暗号が解けたので此処へ来る事は解っていましたが、まさかベルツリータワーから迂回して此処へ飛んで来るとは予想外でした」

 

私は暗視ゴーグルを外す。

 

(は、白馬光…!)

「ですが残念でしたね。上手く警察の目を欺いたつもりでしょうが、君が飛んでくるのは丸見えでしたよ?何しろこの真夜中にそんな目立つ格好で飛行しているんですから」

「なるほど」

「まぁ米花総合博物館からここまでは結構距離がありますし、例え大空を悠々とここを目指して飛んでいる君を警察が発見して慌ててここへ向かってもまず間に合わないでしょうね。

しかし、君にもう逃げ場はない。僕と君がこうやって睨み合ってる間にもうほとんどの警察が此処に到着しました。直ぐにに下から警官たちが来るでしょう。それに、もし動けば…」

 

白馬が拳銃を取り出すと同時に私は素早くトランプ銃を取り出す。

 

(いつの間に…!?)

「探偵ごっこもそれぐらいにしておくんだな、撃った事ないだろう?」

「生憎だね、ハワイの射撃場でみっちり仕込まれているんだよ」

 

互いに一汗掻きながらも不敵に笑い睨み合う。

 

白馬が先に発砲した。

 

ピキーン!!


私の脳内に電流が走る。私は白馬の撃った3発の弾丸をすべて回避し、トランプ銃で白馬の拳銃を弾き飛ばし、白馬の手に渡ったシルバーカムリを奪い返した。

 

「何⁉僕の狙いは完璧だった筈…しかも3発の弾丸を掠り傷一つ付かずに全て躱すなんて……」

「キッドだ!キッドがいたぞ!!」

「こちらE班、キッドを確認しました!現在キッドと交戦中!

動くなキッド!!」

 

下から警官達が続々と駆けつける。

 

「ふっ、白銀の果実-シルバーカムリは予告通り確かに頂きました。では…」

 

私は袖に仕込んでいた閃光弾を使い白馬達を怯ませる。

 

「閃光弾…!?」

「名探偵、知ってるか?怪盗は鮮やかに獲物を盗み出す創造的な芸術家だが…探偵はその後を見て難癖付ける、ただの批評家に過ぎないんだよ」

「うわっ!」

 

凄まじい閃光が消えると、既にそこにはキッドの姿はなかった。

 

「キッドは何処だ?!」

 

「キッドが消えたぞ!」

「こちらE班、キッドに閃光弾を使われ逃げられました!」

「くっ…キッド三世、一体何者なんだ……」

~屋上~

 

「よし、シルバーカムリは無事手に入った。しかし、流石「白銀の果実」というだけあって今まで盗んだ宝石よりも遥かに美しく光り輝いている……」

 

私はその時、唐突に金奈子の顔が脳内に浮かび上がる。

 

「美しき宝石は美しき女性の手にあってこそその輝きを一層強くする。金奈子、この白銀の果実は君にこそ相応しい……」

 

手中のシルバーカムリを握り締める。

 

「名探偵気取りの青二才の鼻もへし折れた事だし、早急に帰還するとしようか」

 

ピキーン!!

 

私の脳内に再び電流が走る。

 

「…!?」

 

背後から何者かが銃弾を発砲。

私は寸での所で背後からの銃弾を躱す。

 

「やっと会えたな怪盗キッド…この日が来るのを待ちに待っていたぞ!23年前の恨み、今度こそ晴らさせてもらうぜ!」

(なるほど、こいつ等がセバスチャンの言ってたパンドラを狙っている組織の人間というわけか……)

「これはこれはお久しぶりです…ですが、あまりに久しぶりすぎて忘れてしまいました、あなた誰でしたっけ?」

「『マンティス』だ。忘れたとは言わさねぇぜ」

(忘れたも何も初対面だしな)

「その宝石を月に照らせ!当は今直ぐにでも貴様を殺してやりたいが、命の石パンドラを探せというボスの命令なんでなぁ…さっさとやれ!」

「ほれ」

 

マンティスの要望通り宝石を月に照らすと、宝石は緑色に激しく輝き始めた。

 

「な、なに!?」

「うわっ!な、何だこれは!?ま、まさかこのシルバーカムリが命の石パンドラだったのか!」

(でも、セバスチャンの話によるとパンドラは赤く光る筈じゃ…)

「き、貴様それは…タキオンジュエルじゃないのか!?」

「タキオンジュエル?」

「世界にいくつか散らばっていると言われている時を操る事が出来る時空石だ!パンドラと見分け方が似ていると聞いていたが、まさか緑色に光るとはな」

「時を操る事が出来る時空石……これが?」

「だがそれを使えるのは人の革新を持った魔法石を使う力のある特殊な人間だけだ!死ねキッド!!」

 

ピキーン!!

 

再び私の脳内に電流走る。

 

「…!?うわっ!!」

 

それに反応するかのように宝石は更に激しく輝き出す。

 

「な、なに?!まさか…貴様は!うわああああああ!!」

「うわああああああーーー!!」

 

凄まじい光が放出し世界中を包み込んで行った。そして、光が収まり……。

 

「くっ…ん、収まったのか?全く、いきなり光り出すとは…腰を抜かしてしまったじゃないか。ん?じ、時間が5分戻っている!」

 

私は博物館の時計台を見て驚いた。

 

「どうなってる……っ!!」

 

(回想)

 

「世界にいくつか散らばっているといわれている時を操る事が出来る時空石だ!」

 

(回想終了)

 

「まさか、時間を巻き戻したのか?!時間を操れる時空石とは本当だったんだな……おっ、不味い!早く戻らないとまた奴等が此処に来る!」

 

私はハンググライダーを広げ急いで屋上から飛び立った。

-翌日-

~エクシア学園~

 

「ねぇ、昨日大変だったよね?」

「急にデュランダル博物館の方が光り出すんだもんなぁ、びっくりしたぜ」

 

生徒達がざわついている。

 

「晴くん、昨日の大きな光見た?」

 

「ああ、えっと…オレ丁度そのころ風呂入ってたから見てねぇなぁ」

「2月4日土曜日午前8時32分12秒、エクシア学園高校に転入…」

「ん?」

(この声とフレーズは…)

「白馬光です、どうぞよろしくお願いします」

「は、白馬光!?」

「マジですか……」


※イメージボイス
-CAST-
・黒羽晴斗/キッド三世 CV:石川界人
・外海金奈子       CV:田村ゆかり
・白馬光          CV:宮野真守

・黄崎光太郎       CV:岡本信彦

・セバスチャン外海   CV:子安武人

・マンティス        CV:玄田哲章

・土門柏雄        CV:関智一

・黒羽青子        CV:釘宮理恵