キッド三世-KID THE THIRD- episode4「金奈子」※更新中 | ゲゲゲのブラック次元

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~某博物館~
「よし、依頼の品は手に入れたし、とっととヅラかるか。にしてもここのセキュリティはなかなかのもんだったらしいから楽しみにしてたんだが、なんで一つも動いてねぇんだ…?」
 
~外海邸 地下室~
「誰にも貴方の邪魔はさせません……晴斗様」
~アルヴァトロン社 日本支社~
 

「さて、例の品は手に入れられたかな?キッド三世君……」

 

アルヴァトーレ=コーナー(53)

アルヴァトロン社 社長

 

「フン…当然。私を誰だと思っているのですか?月下の奇術師の名を継し私に、入れない所、盗めないモノなどありませんよ」
「ハッハッハ!いや失礼した。では、早速見せてくれたまえ」
 
私は盗んだ宝石を机の上に置く。
 
「おお…素晴らしい‼これがアレを生み出す対の1つ…「怒り」を象徴する『ロキ・ルビー』‼」
「既に鑑定済みですが、間違いなく本物ですよ」
「いや、全くもってご苦労だった。やはり君に依頼して正解だったようだ」
 
私は社長から小切手を受け取る。
 
「この調子で残りの「嘆き」を象徴する宝石も盗んでもらいたい。金ならいくらでも出そう。ほれ、これは今日の挨拶代わりだ…取っておきたまえ」
 
札束が大量に入ったケースを差し出してくる。
 
「フッ…お任せください。このキッド三世、頂くものを頂いている以上、必ずやご期待に沿えるよう手に入れて見せましょう」
~黒羽邸 地下室キッドルーム~
 
「ハッハッハ‼大量大量!ぼろ儲けだぜこりゃ」
「あの、坊ちゃま…」
「あ?何だセバスチャン。ほら見ろよ、これが挨拶代わりだってよ!あのおっさん、流石世界でも指折りの大企業の社長なだけあって、気前がイイぜ!」
「坊ちゃま……少しお聞きください。私の知るところによると、快斗様もそのお父上であられる初代キッドも、そのような怪しげな取引をしたことはなかったと…」
「分かってるよ。父さんは盗んだ宝石を返したりしてたんだろ?父さんはすぐに辞めるつもりだったからそうしてたのかも知れねーが、俺ぁそんな一門にもならねー馬鹿な真似はしねぇ
 
キッドの肖像画を眺める。
 
「俺は先代までのキッドとは違う。いずれ一流の奇術師として世界中を飛び回り、同時にそこにあるありとあらゆる宝を掻っ攫う。一度泥棒になったからには、最低でも国際指名手配にはなんねーと気がすまねーからな!世界一の奇術師にして世界一の大怪盗になるってわけさ!
 
「だがその前に、出来るだけ金を貯えとかねーとな」
「しかし、坊ちゃまが金に困ることなど有り得ません。何故、わざわざ盗みの依頼を受けてまで金を集めておられるのですか?」
「フッ…あの娘に、喜んでもらうためさ……」
「……?」
 
わざとセバスチャンに聞こえないように小声でつぶやく。
 
「さてと、コーナー社長から依頼された宝石が我が国で展示されるのは来年の同じ日だ。それより間もなく、大切なイベントがある」
大切なイベント…と言いますと?」
「は?アンタ、明日が何の日か忘れたわけじゃねーよな?」
「は、はぁ…何の日と申されましても、明日は金奈子の誕生日くらいしか特にこれと言ったものはありませんが……」
「それだよ!」
「おっ…⁉」
「実は丁度明日、オレが以前盗んだシルバーカムリと対を成す、黄金の果実-ゴールデンマルスが展示されることなってんだ」
「……⁉坊ちゃま、まさかそれを金奈子にプレゼントなさるおつもりですか⁉」
「ああ、オレももう高校生なんだからよ、そろそろキメなきゃならねぇ時だろうよ。金奈子に告白するなら、今日がベストだ」
「…………」
「なんて顔してんだよセバスチャン、気付いてなかったのか?オレァな、金奈子が好きなんだよ」
「坊ちゃま……」
「オレはこの世のありとあらゆる宝を手に入れ、世界最大の大怪盗になるつもりだ。
そのためにはまず、どんな財宝よりも価値のある“宝”を手に入れておかなきゃならねぇ。
あんたも父さん…いや2代目の付き人なら、一流の怪盗紳士にとって何が最高の宝なのか、分かるだろ…?」
「……“女”ですか?」
「そうだ。世界一の怪盗になるこのオレに相応しい女は、金奈子をおいて他にはねぇ。
美しさと愛らしさ、そしてオレへの優しさならあの娘を超える女はいない。
金奈子がオレの傍にいてこそ、全てを手に入れる喜びを実感できるんだ!」
「坊ちゃま…お言葉ですが、あの娘をお選びになるのは考え直したほうがよろしいかと……」
「ほう…いくら主人の息子とはいえ、あれだけ可愛い娘を他人に渡したくはないってか?その気持ちはよく分かるぜ。
けどなぁ、オレは欲しいと思ったもんは必ずいただくぜ?盗んででもな」
「いいえ、私が心配しているのは坊ちゃま…貴方のほうです」
「えっ……?」
「正直なところ、私がこの世で唯一尊敬する快斗様のご子息である坊ちゃまに、我が子を選んでいただけるというのはこれ以上ないと言えるほど光栄の至りです。しかし、あくまでも“それだけ”ならの話です」
「どういうことだよ?」
「坊ちゃまはお気付きかそうでないか…あの子は7年前からなにかがおかしくなってしまいました」
 
(回想)
あれは金奈子の母親、そして私の妻である紫苑が亡くなった夜のことです。
 
「大切な人のために…生きるのよ……」
 
外海紫苑(21)
外海家 5代目党首 
金奈子の母親
 
「……分かっています、私はあの方のためだけに生まれてきたのだから」
「金奈子…?」
「晴斗様のために、今から私は影になります。だから安心して、死んでください……お母様。
ね?お父様……」
「……⁉」
 
振り返ったあの子の顔は、決して忘れることのできない、どう言い表せばよいのかわからない…おぞましいものでした。
それ以来金奈子は、まるでなにかにとり憑かれたようにおかしくなってしまいました。
 
(回想終了)
 
「坊ちゃま、あの子は危険です……」
 
オレはセバスチャンをぶん殴った。
 
「ぼ…坊ちゃま……⁉」
「情けねぇこと言ってんじゃねぇよ‼あんたあの娘の父親だろ⁉親父が娘のこと恐がってどうすんだ‼」
「で…ですが坊ちゃま……現在の金奈子はもう昔のあの子ではありません。紫苑が死んでからあの子はおかしくなってしまったのです!」
「ふざけんな‼金奈子はどんな時でもオレに優しくしてくれる女神のような娘だ!それは昔も今も何一つ変わっちゃいねぇ……イカレてんのはあんたの方だよ‼」
「坊ちゃま……」
「チッ…話はもう終わりだ。とにかくオレは今夜、黄金の果実を盗んで金奈子への誕生日プレゼントにする。
そして絶対にあの娘をオレの彼女(おんな)にしてみせる…!あんたにオレは止められねぇよ」
~黒羽邸 屋根上~
「よし、後はどう言ってこれを金奈子にプレゼントするかだが……」
「お帰りなさい」
「……⁉」
「キッド三世……いや…晴斗様」
「金奈子…お前……知ってたのか?」
「私は地下室のモニタールームから、ずっとずっと貴方のことを見ていました。
それだけじゃありません、貴方のお仕事の邪魔をするシステムも、私がハッキングして全てダウンさせていただきました。
全部、貴方のためです」
「金奈子……」
 
少しの沈黙があった。
 
「そ、そうか…お前は昔から機械に強かったもんな。けどそこまでできるようになってるなんて知らなかったぜ。
ま、まあ…オレがキッドやってること知ってんなら、手間が省けた」
 
懐からゴールデンマルスを取り出す。
 
「誕生日おめでとう」
「……⁉」
「それから金奈子、オレの人生で最も大事な話がある」
「…………」
「金奈子、オレと付き合ってくれ」
「……⁉」
「君の美しさと可愛さに、今までどれだけの男が惹かれたかは言うまでもない。オレだってその例外じゃねぇ。
いやむしろ、オレは誰よりもお前に惹かれてる!物心ついたころからお前と一緒にいるオレだからこそだ。
オレはいつか最強の怪盗になる男…そのオレに相応しい女は…金奈子、お前しかいないんだ」
「だめ……」
「えっ…⁉」
「私は…貴方の隣には、いられません……」
「やっぱり、オレのこと嫌いなのか?ずっと冷たくしてたから…」
「違う‼」
「……⁉」
「そんなわけない…私が晴斗様を嫌いになるなんて…絶対にありません。私はずっと貴方を愛しています…‼
晴斗様のことを想わなくなった事なんて一瞬も…!」
「オレもだよ…ずっと金奈子、お前が…いや君のことが好きだった。
けど、ならなんでオレの彼女になれないんだ?」
「私はずっと晴斗様と一緒にいたい…大好きな晴斗様に愛してもらえてこんなに嬉しいことはない……
でも、私が晴斗様の隣にいればきっと貴方によくないことが起きる……
だから私は後ろで…貴方の影として生きいければ、それでいいんです」
「だから自分は従者でいいって……?そんなんでオレが納得すると思ってんのか‼」
「……⁉」
 
金奈子の細く薄い華奢な体を抱きしめる。
 
「金奈子、オレが君を好きになったのは君のその美しさだけじゃない。
君は誰よりもオレのことを思い、誰よりもオレに優しくしてきてくれた。
だからオレは君が好きなんだよ」
「そんなこと…」
「当たり前だって…?もう君の価値観についてとやかく言うつもりはない。
けどな、もうオレにとって君は傍にいて当たり前…裏を返せば、君がいなきゃいけないようになっちまったんだよ‼」
「…………」
「君の優しさに慣れ過ぎて、もう君がいない生活なんて考えられねぇ。君と一緒じゃなきゃダメだ……
泥棒として、いや…オレなんか今まで生きてこられたのは君が傍にいたからだ!
オレは…君が一緒じゃなきゃ何やっても半端で意味がねえんだよ‼」
「私こそ…晴斗様がいなければ、生きてる意味なんかない……」
「金奈子、オレみてぇな悪党が誰かを好きになれるのは、たぶん君が最初で最後だ。
オレのことを思うなら、受け取ってくれ……」
「晴斗様……」
「金奈子…愛してる……」
 

※イメージボイス
-CAST-
・黒羽晴斗/キッド三世   CV:石川界人

・外海金奈子            CV:田村ゆかり

・セバスチャン外海        CV:子安武人

・外海紫苑             CV:水樹奈々

・アルヴァトーレ=コーナー CV:松本保典