2006/1/16
長男の入院した病院(S大学病院)の面会時間は
11:00~13:00 16:00~20:00 となっている。
完全看護で、基本的に親の付き添いはできない。
夕方からは、小児科病棟内も面会の親御さんが出入りして少し賑やかになった。
私たち夫婦は次男と病棟前で待機するか、長男の病室に行くかを交代で何度か繰り返した。
長男の病室に行っても寝ているか、検査に出ているかで、様子はよくわからなかった。
眠っている・・・かと思えば痙攣をおこしたりして、その都度看護士さんを呼んだ。
その日、長男の意識が戻ることはなかった。
20時を過ぎると、面会の親御さんたちもいなくなり、集中治療室を除いて他の部屋は消灯になったが、
担当医師が説明に来るというので、そのまましばらく待った。
やがて、9時近くになり、私たちは夫婦揃って(次男も連れて)応接室に通され、医師の話を聞いた。
医師によると、今長男に起きている症状(けいれん、意識障害)で考えられる病気は次のいずれかである可能性が高いという。
・てんかん
・免疫異常
・急性髄膜炎
・急性脳炎、脳症
医師の説明によると、以下のようなことであった。
<てんかん>は、脳の神経細胞がなんらかの原因で刺激されて、体がけいれんする病気。原因は特定できないことが多い。
<免疫異常>は、本来外部からの異物を攻撃する免疫機能が間違って作動し、自分自身を攻撃している状態。
<髄膜炎>は脳と脊椎を保護している膜(髄膜)にウイルスや細菌が入り炎症を起こしている状態。
<脳炎>は、ウイルスが脳に感染し、脳に直接ダメージが起きるもの。
<脳症>は、脳に直接ウイルスが入ったわけではないが、何らかの要因で脳がダメージを受けているもの。
現段階で、MRIやCT検査では目立った異常は見られず、なんとも判断がつかない。
ただ、最悪は脳炎が考えられるので、そのための処置をとる。
脳炎で抗ウイルス薬があるのはその時点ではたった二つだった。
ひとつはインフルエンザ脳炎。
このインフルエンザ脳炎というのは恐ろしい病気で、このインフルエンザ菌が脳に入ると、症状は急激に進行し、半日後には「死ぬか生きるか」の危篤状態になることが多い。
長男の様子を見ていると、急激に症状が進んでいるようには見えないので、違うだろうとのこと。
もうひとつはヘルペス脳炎。
急性脳炎の3割ほどを占める、脳炎の中ではもっとも多いウイルス。
後遺症が残りやすいが、早めに投薬すれば、助かる確率が高い。
そして、それ以外となると・・・
ウイルスの数など計り知れない。
空気中に、今、人の肌の上にも無数のウイルスがある。
体の中に幾重にもバリアがあり、これらのウイルスは容易には体内に入らないようになっているが、これが鼻や喉に入って炎症をおこせば「鼻かぜ」「喉かぜ」になるし、気管支に入れば「気管支炎」肺に入れば「肺炎」・・・というわけである。
体の防御機能が劣っていたり、たまたまの偶然で入り込む。
これが、いくつもの防御をかいくぐってたまたま脳に到達してしまったものが急性脳炎。
なんのウイルスか、検査しても分からないことも多いし、分かったところで、ワクチンも対処薬もない。
その日のうちに検体を検査機関に送ったが、脳炎だとしても、検査結果が出るまでには1~2週間はかかるという。
それを待っていては、ヘルペス脳炎だった場合には手遅れになるので、
ヘルペス脳炎の薬の点滴を開始した。
検査結果でヘルペスではないとわかるまでは点滴を続ける。
合わせて対処療法として、脳浮腫を抑える薬と痙攣を抑える薬を点滴する。
医師の説明に一応は納得したが、
結局この日はなんの病気かもよく分からないまま帰宅した。
夫の大学時代の友人で、たまたま脳外科を専門として某大学病院で勤務・研究をしている医師がおり、
夫は彼に電話をして相談した。
その友人は1年間にわたる海外研修から戻ったばかりで、脳の病気については最新の情報を持っているはずだ。
S大学病院の医師やスタッフは信頼できるように感じたが、セカンドオピニオンをとらずにいられなかった。
今、長男のためにできることは何でもしたかった。
友人の話では、担当医師の判断や対応は的確で、今のところはそれくらいしか処置がないだろうとのこと。
何もわからない、何もできないまま、
不安で、もどかしく、眠れない夜が始まった。
【つづく】