ヨンは、チュンソクに、
迂達赤達の配置の変更を言い渡す。
『天門が開いたと噂にならぬよう
くれぐれも気をつけろ。
とくに・・・』
ヨンの脳裏に、苦々しい記憶が蘇る。
「大護軍・・・」
チュンソクは、ヨンの胸の内に過る
4年前の記憶に気付く。
『とにかく、気を抜くな。
今まで以上に・・・な。』
ヨンは、迂達赤達に
全幅の信頼を置いていた。
しかし、天門の噂が、
高麗だけでなく、元にまで届く事だけは
どうしても避けたかった。
「はっ!
大護軍!!」
チュンソクは、右の拳を旨にあて
力強く答えた。
ヨンは、チュンソクの返事に
一つ頷くと、兵舎の窓際に近づく。
『何があっても、
今度こそ、護ってみせる・・・』
ヨンは、窓の向こう、
丘の麓にある屋敷の方角を見つめながら
決意を込めた声で言った。
兵舎に戻り、一通りの役目を終えたヨンは、
後の事をチュンソクに任せ、兵舎の門を出ていく。
その行先は、兵舎からほど近い
丘の麓にある小さな屋敷だった。
チュホンに跨り、その屋敷へと
近づいていく。
近づくにつれ、ヨンの心の臓が
高鳴り始める。
それもそのはず。
4年間、片時も忘れたことの無い
待ち焦がれた愛しい女人が
その屋敷でヨンの帰りを待っていた。
『チュホン。
お前も、あの方に
早く逢いたいのか?』
ヨンは、チュホンの鬣を軽く撫でながら
話かける。
チュホンは、ヨンの言葉に
答えるかのように、
首を上下に振った。
『ふ・・・
チュホン。
急ぐぞ!!』
ヨンは、手綱を少し強く握りしめなおした。
チュホンも、それに応じるように
その脚を速めた。
丘の麓にある小さな屋敷では、
天門を潜った疲れと、
漸くヨンのもとに戻って来れた安心感、
そして、トギが煎じた薬湯に入っていた
眠りを促す薬草の効果で
ウンスは、深い眠りについていた。
テマンは、屋敷の屋根の上から
その様子を、見守っていた。
日が西に傾き、暫くたったころ。
兵舎から屋敷へとヨンが戻ってきた。
ヨンに気付いたテマンが、
ヨンのもとに駆け寄ってくる。
「大護軍!!」
『テマン!
あの方は?』
ヨンは、チュホンから降りながら
屋敷の護衛の為残っていたテマンに聞いた。
「あ・・・
えっと・・・
トギが薬湯を飲ませ
お眠りに・・・」
テマンが最後まで言葉を紡ぐ前に
ヨンは、屋敷の中へと走り出した。
薬湯?
何故だ?
まさか、徳興君の毒が・・・まだ・・・
ヨンは、騒めく胸を
何とか抑えながら、
ウンスが眠っている部屋へと駆け付けた。
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ドラマ『シンイ』の2次小説です。
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by junjun