白い夢幻花の薬を飲み、暫くすると、
主の息が、安らかなものになっていく。
ウンスは、主の息の変化に気付き、
脈診をする。
「脈が・・・力強くなっている・・・
うん・・・
これなら、大丈夫・・・
きっと、良くなるわ・・・」
ウンスは、主の腕をなおしながら
嬉しそうに告げた。
「さようでございますか・・・
よろしゅうございました・・・」
喜ぶとばかりに思っていた
使用人の男の顔が、悲し気に見える。
『如何したのだ?
主が助かったのだ。
もう少し、嬉しそうにしたらどうだ?』
ヨンは、使用人の男に声をかけた。
「はい。
ご主人様が助かったこと。
それは、とても嬉しゅうございます。
されど・・・」
使用人の男は、
寝台で眠る主の顔をジッと見ている。
『されど・・・?
どうした?
なにかあるのか?』
ヨンは、もう一度、使用人の男に声をかけた。
「ご主人様が、お目覚めになれば
おわかりになるかと・・・」
使用人の男は、
主を見守りながら呟くように言った。
「ねぇ・・・?
さっき飲ませたお薬・・・
何か、副作用があるの?」
ウンスは、使用人の男の言葉に
咄嗟に反応した。
「ふく・・・さよう・・・?
奥方様のお言葉の意味は解りませんが・・・
お目覚めになった
ご主人様は・・・
一切の記憶を・・・
陰陽道の記憶を・・・」
使用人の男は、それ以上言葉にすることが出来ず
俯いてしまった。
『記憶・・・
記憶をなくす・・・という事か?』
「そんな・・・まさか・・・?」
ヨンとウンスは、使用人の男の言葉に
言葉をなくした。
「朱色の夢幻花の術の術返しを
消し去るには・・・
代償を払わねばなりません・・・
それ故に・・・
夢幻花の呪術は・・・
ご主人様だけが扱える呪術だったのです。
そして・・・
ご主人様は・・・
夢幻花の呪術を
この世から消し去ることを望まれておりました。
これで・・・
ご主人様の願いはかなえられました・・・
これからは、ご主人様を支え
つつましやかに暮らしてまいります・・・」
使用人の男は、
ヨンとウンスに向かい、深々と頭をさげ
お辞儀をした。
「そんな・・・
主さんにとって、陰陽道は
とっても大切なはずなのに・・・」
ウンスは、使用人の男の言葉に
思わず、涙ぐんだ。
ヨンは、涙ぐむウンスの肩をそっと抱きよせる。
『それが・・・
主の願い・・・だったと・・・
咲くかどうかわからぬ白い夢幻花だというのに・・・
術返しで、命を落とすかもしれぬというのに・・・
それもこれも・・・
夢幻花の呪術を、
己が欲の為に使おうとする輩がいたためか・・・』
ヨンは、鬼剣をガチャリと握りしめると
ウンスの肩を抱き寄せたまま、天を仰いだ。

にほんブログ村
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
最後まで、お読みいただき、
ありがとうございます。
ドラマ『シンイ』の2次小説です。
私の想像の世界です。
お読みいただき、
イメージが異なってしまうかもしれません。
その際は、スルーをお願いします。
by junjun