康安殿
月が中天に差し掛かり
静かな夜。
王は、一人康安殿で
絵筆を握りながら、心を静め時を過ごしていた。
執務机の横の蝋燭の灯りが
微かに揺れる。
王は、絵筆を置くと、
ゆっくりと顔をあげた。
「待ちかねていたぞ。」
王は、静かに一言告げると
立ち上がり、段下へと歩みよった。
黒装束の男が一人、跪き王に頭を垂れる。
「上護軍チェ・ヨン・・・
いや、今は、《蒼い狼》のチェ・ヨンであったか・・・」
『王様・・・』
ヨンは、顔をあげ王の顔を見上げる。
「して・・・
手筈通りに事は、運んでいるか?」
『はい。
王様にお力添えいただきました故・・・
全て、手筈通りに進んでおります。』
「鉄原には・・・?」
『明日、早朝に出立いたします。』
「あちらの宮には・・・?」
『それも、明日の早朝に・・・』
「さすが、段取りが良いな。
あちらの宮は、余が幼き頃過ごした宮だ。
少々、手狭かもしれぬが
静かな宮だ。
病を癒すに良いと思うぞ。」
『有難き幸せでございます。
此度の王様のお心遣い、
かの方より、心からの御礼をと
申し仕っております。』
ヨンは、深々と頭を下げる。
「市井に身を隠すよりも、
皇宮内で身を隠していた方が
灯台もと暗し・・・というであろう・・・
あの宮は、今は、忘れ去られておる。
それに、康安殿からも、宣仁殿からも
少々離れておる故、
人目につかぬであろう。
そなたのこと故、
警護の段取りも、抜かりないと思うが・・・」
『王様・・・』
王の揶揄うような物言いに、
ヨンは、苦笑いを浮かべる。
「さて・・・時が惜しい。
本題に入るとしよう。
此度の策・・・
まずは、倭国への牽制であるが・・・」
『はい。
そのことにつきましては、
すでに、アン・ジェとチュンソク、
そして、イ・リュウに話を通してございます。
イ・リュウ率いる海軍を中心に
事をすすめながら、アン・ジェ、チュンソクが
陸からの援護いたします。
夜の海上での戦となりますれば、
高麗海軍の右に出るものはいないかと存じます。』
ヨンは、自信ありげに王に告げた。
「夜襲・・・か・・・
なるほど・・・
かつての赤月隊を彷彿させる・・・ということだな。
倭国もこれには、度肝を抜かれよう。」
王は、納得の表情を浮かべた。
「して・・・
大掃除の件は・・・?
これからどのように致すのだ・・・?」
『今少し・・・
時をいただくことになるかと・・・』
「うむ・・・
どのような段取りなのだ・・・?」
『皇宮内に・・・
夢幻花を咲かせようかと・・・』
「夢幻花・・・だと・・・?」
『はい。
此度の謀の首謀者は、
夢幻花の呪術を知っているものでございます。
故に、夢幻花が、皇宮内に咲いているとなると・・・』
「心穏やかに過ごすことは
難しいであろう・・・」
《上護軍様。
皇宮内に、夢幻花を咲かせてください。
皇宮内で、倭国と・・・
此度の謀に関係している者ならば
夢幻花の呪術のことを聞いているはずです。
この花を見れば、
向こうから、私に接触してくるはず。
その者を捕らえることによって、
倭国との繋がりある者を一掃できるかと・・・》
『恐らく、術者の主に繋ぎをつけてくるかと・・・』
ヨンは、主の申し出を思い出しながら
王に策のあらましを告げた。

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ドラマ『シンイ』の2次小説です。
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by junjun