「お湯加減大丈夫ですか?」

 

「はい」と私。

今、美容院でシャンプーの真っ最中。

 

指名スタイリストさんが他の席に行っている間

シャンプーしてくれるアシスタント君に

 

失礼のないようリラックスムードから

少し気持ちにギアをいれたものの・・・・

 

口下手だから、

楽しい会話を繰り広げられるわけでもないし・・・

 

 

なんて思っていたら、いい香りがした。

 

 

「いい香り・・・」

 

「これ、フィルメロウっていうシャンプーですね。」

 

彼の声はなんだか落ち着いて

優しく包まれるような感じ。

 

「へ~私、いつもクエンチ使ってて。

フィルメロウはどう違うんです?」

 

 

・・・なんだかアシスタントくん

には少し挑戦的な質問をしてしまった。。

 

でも彼は緊張した様子もなく答えてくれる。

 

「あ~フィルメロウにはウレア誘導体っていう

 髪の柔軟性を高める成分が入ってて・・・

 髪に柔軟性が出て柔らかな仕上がりになる感じですかね。」

 

成分の名前とか難しいことは聞いても

よくわかんないんだけど

説明されるとふーんと

分かった気になるの不思議。

 

「そ~なんだ~いい香り。」

 

「そ~ですね。バラの香りで。

 人気ですよ。」

 

「私、普段クエンチ使ってて。」

 

「あ、そーなんですね。

 クエンチは水分調整してくれる感じですよね。」

 

「そ~なの!一度ここでクエンチでシャンプー

してもらったら髪が全然絡まらなくなって!

それで感動して、そっからずっと使ってて。

 

っていうかシャンプーちゃんと勉強してて偉いですね。

大変でしょ?色んな種類あるし次々出るし」

 

そういうと彼は少し照れたような声で

 

「実はオージュアの資格とるために勉強してたんです」

 

「あ!そ~なんだ。ど~りで詳しいと思ったよ~。」

 

「まあ、この間その資格試験、落ちたんですけど。」

 

「そうなの!?難しいんだね。大変だね。。」

 

「そうなんすよ・・・。」

 

少し沈んだかと思ったら、

続けて彼は元気な声でこう言った。

 

「でも、知識はあるんで

 なんでも聞いてください!」

 

彼は笑顔いっぱいな感じでそう私に言ってくれた。

 

言ってくれた。

 

言ってくれたけど・・

私は心の中で、めっっっちゃ思った!

 

『え?!でも落ちたんだよね!?

 落ちたのに、「知識あるんで何でも聞いてください」って

 どういうこと!?凄すぎる・・・若者って凄すぎる!

 面白すぎる。。。笑』
 

私はこのびっくり発言で

緊張がほどけて一気に自然体になってしまった。