問題ゎ、かわいくなったことぢゃなかった。
スマホを握りしめ、公園のベンチでため息をつく。
今日の自分ゎ、どう見ても“おにゃのこ”。
声も仕草も、鏡の中の輪郭も、全部おにゃのこ。
でも、♂モードの生活が待っている。
郵便物の宛名、近所の顔見知り、何より玄関の向こうの「いつもの自分」。
「このままぢゃ、帰れない……」
口紅ゎまだ唇にきちんと居座っていて、落ちる気配はゼロ。
あの極小文字が、脳内で拡大表示される。
〈キスすると解除〉
「ほんとに、それだけ?」
条件がシンプルすぎて、逆に疑わしい。
キス。
軽く? それともちゃんと?
そもそも、誰と?
道行く人たちゎ、それぞれの一日を抱えて忙しそうで、junの事情なんて誰も知らない。
知られたら困る。
でも戻れないのも、もっと困る。
カフェに逃げ込むと、常連のバリスタが笑顔で声をかけてきた。
「お美しい方。どこかでお会いしたことありません?」
その一言で、胸がきゅっと縮む。
違う。違うんです。
説明できない違い。
カップの縁に映る自分の唇を見つめながら、junゎ考える。
この口紅、意地が悪い。
日常のど真ん中で、選択を迫ってくる。
スマホを開いてブログを確認すると、下書きが一つ残っていた。
タイトルだけが、ぽつんと光っている。
解除条件、ほんとに“キス”だけ?
「……助けて、コメント欄」
そう呟いて、投稿ボタンを押した。
帰り道、夕焼けが街を染める。
その色は、あの口紅とよく似ていた。

次回ゎ「キスで戻って、夜で迷子」
↑別画面が開ききるまでちょっと待ってね。
