エッセイ;ジージのジャズダンス挑戦 (総集編-最終3) | 嶋崎JUN(ソングライター&国際派不動産コンサル)

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エッセイ;ジージのジャズダンス挑戦 (総集編-最終3)


その3、ダンスへの心


・ジャズダンスのエリ先生

そうしてしばらくジャズダンスのクラスを離れていたのですが、5月の後半でした。ある日エリ先生のジャズダンスで顔なじみだったオバさんたちから、エリ先生が「ヒゲのオジさんが最近来てくれていませんね?」と言っていましたよ、と伝えられます。(ああ、へたくそなジーさんなのに、一生懸命だと思ってくれていたんだろうか)

それで6月になってまた顔を出します。すると今回は2ヶ月かけてマイケルをやるという。昔のBadの「Man in the mirror」と言う曲。それならまた頑張ってみよう、という気になりました。



でもエリ節は相変わらず絶好調でした。「身の程を知って練習してください!」「自分から踊ろう、と言う意識がなくて、真似るだけだから覚えられないんです」みんなに向かって言うのですが、ともかくレッスン中にいろいろ言われるので、次のようなタイプの人たちだけのクラスです。

1、「ああ、また始まった。でも本格的先生だから」と割り切れる人

2、「ああ小娘が何か言っている、可愛いじゃん」と余裕の人

3、子供の時から口うるさい母親に育てられて、すごく鈍感力のある人

4、自分のことではないと思い込んでいる(?)一部の上手な人

・・・えっ、私? 割り切ろう、余裕でいよう、と自分に言い聞かせるけれど、実は限界のちょっと手前なのです。



・マイケルの心を映すミラー?

さて、今回のマイケルの曲です。エリ先生は「私は英語には弱いのですが、自分なりに解釈して振付しました」そして続けます。「鏡の中の自分を見つめて、自分の醜さにイヤだ、イヤだ、と顔を手で覆い隠す。でもやっぱり現実を見ざるを得ない。そんな葛藤を表現した振付です」どうもエリ先生は「オペラ座の怪人」みたいな雰囲気をイメージしている。

それで家に戻ってパソコンでマイケルの歌詞を読んでみて驚きました。エリ先生の解釈と全然違う。実は社会派メッセージ曲? 以前のアギレラのセクシー曲の解釈を思い出します。バレスクという映画の中の「Express」というセクシー曲で、その時のエリ先生の解釈は「スロージャズ風の高級娼婦のストリップ系のダンス」でした。そして「客に媚びずに、相手をしてあげようか、という目線です」とも言っていた。



・ダンスの解釈

エリ先生の場合、歌詞は無視して、タイトルと曲調から豊かな感性だけでイメージして振付けるようです。彼女は日本人に希少なアーティスト・タイプなんだと思う。確かに作品って、解釈やオリジナルがどうであっても、自分がどう感じるかの方が大事ですね。ひょっとして勉強は落ちこぼれだったかも?いえ、私と少しだけ似ているかな(?)と思ったのです。



ただ、そうはいっても、相変わらず立ち尽くしているオバさんやオジさんたち(私も)に向かって説教をする。「覚えられないことや、上手くならないことを、年のせいにしないでください!」うーん、ここまで辛辣、いえ熱心(?)な先生って、普通、ジムにはいないと思う。エリ先生のレッスンはダンスだけではなくて、人格が否定されても動じないような精神も鍛えられる。




・エリ先生のジャズダンス

今回はマイケルを2ヶ月間やってクラス内の発表会のようにするというので、誰かがお願いしたらエリ先生が動画を撮らせてくれた。そうして今回はほとんどの人が振りを概ね覚えてきました。私も今週はスマホ動画で事前に振りを確認したので、久々に自信満々の参加です。

いつも私は右端の奥の一番後ろ(4列目)で、できるだけエリ先生と目が合わない様に10mくらいは距離を開けています。どのクラスでもポジションがあって、上手くて自信のある人や先生の動きを良く見たい人は前の方にいます。一方で自信のない人たちは後ろです。で、このクラスだけは他のクラスと違って、後ろのポジションの方が取合いになります。今回無理に後ろを取らなかったら、何と真ん中の2列目のポジションになりました。エリ先生とは僅か2-3mの至近距離です。




・猿回しの猿

エリ先生はいつもこう言っていました。「みなさんは小学生にも劣ります。子供たちは細かい所は違っていても全体の流れを覚えて踊ります」それを今回は自分もできそうなので、何となく前の方にいたのです。ところが多くの人が全体の流れを覚えてきた感じだったのにエリ先生は不機嫌です。「みなさん、教えた振りと全然違います!」「一つ一つの動きには意味があるんです!」(何だ、やっぱり怒るんだ!何て欲深り、いや熱心な先生なんだ?)



「私は黒人の先生にも師事して、腕を前に出すだけでもパワーが感じられるように、と教わりました」うーん、いつもこの辺まではいいのです。「音楽の色を見てください」「筋肉ではなく骨の動きです」こういうのもOKです。でもその勢いで必ず

余計なことも言います。「その点でみなさんのはまるで猿回しの猿みたいです(?)」しかもエリ先生はその猿回しの猿のモノマネがとても上手です。(劇団員よりも芸能人の方が向いている?)
ただ、今日発見したのは、エリ先生のお説教って、実は至近距離の方が、別に顔を伏せていなくても台風の目の中にいるように死角になって気にならない、と言うことでした。横顔しか見えない。うん、これは大発見だ。これからは2列目にしよう。




・クレームで辞める?

7月に入ってエリ先生はヒステリックになってきました。レッスンの途中で「やる気のない人は今から出ていってください」とまで言う。あまりに不愉快なので、本当に出て行こうかと思いつつも何とか我慢したら、最後に「みなさん、7月一杯。あと3週でこのクラスを辞めることになりました」と言うのです。ジム側からクレ―ムやレッスンへの要望などが伝えられて、それなら、と辞めることにしたらしい。最近はエリ先生のような本格的なダンスの先生はどこでもジュニア向けで引っ張りだこで強気なのです。





・メッセージ・カード

翌週のエリ先生はますますヒートアップ。「覚えようとしないのに、どうして私のクラスに出てくるのかが不思議です」「私の弟子にいて欲しくない!」とも言う。とてもジムのスタジオのダンスクラスとは思えない

でも何週も多くの人が家で練習をしてきたせいで、明らかにみんなの踊りも上達してきたせいか、エリ先生も一時よりは少し落ちついてきた。「来週の最後のレッスンは2ヶ月間の仕上げなので、ドレス・コードを白にしてください。最後はみなさん、決めましょう」



せっかくの本格的な先生だったので本当はダンスの世界の話をいろいろもっと聞いてみたかった。でも以前から来ている人にたちに「送別の飲み会でもするんでしょうか?」と聞いても誰一人のってこない。あれ、やっぱり心が通っていないんだろうか?でもみんなのメッセージ・カードぐらいはエリ先生に渡してあげたいと思って準備をします。そうしていたら「花束を贈ろう」と言う動きも出てきた。





・ファイナル・レッスン

エリ先生が最後のレッスンは「発表会のようにやりたい」と言っていた。家でカウントや振りの細かい所をまた確認します。そしてエリ先生がいつも言っていることを噛みしめます。(曲のリズムを打って、大きくメリハリを付ける。表現をするようにもっと意識しよう)ダンスって確かにその通りなんだろうと思う。




そして最後のレッスンです。でも最後までエリ先生らしさ(?)が崩れない。今回もできない生徒たちを叱ります。でも覚えてはきてもなかなか1曲を完璧に踊れない。私も練習してきたのに、リズムを取れなかったり、すぐ外して間違ってしまう。とても残念で悔しい思いをしながら必死に踊る。ずっと苛ついていたエリ先生がいよいよ残り時間が少なくなってから、一度息をついてから口を開きます。

「これまで6年間もこのクラスをやってきて、でも結局、私の意図をみなさんに十分に伝えるこ

とができませんでした」先生から見て、発表会のようにするレベルにみんなの動きができていなかったようです。そしてまるで観念したかのようにゆっくりと言います。多分これがエリ先生のラストメッセージ?「みなさん、いよいよこれが最後の一回です。最後はどうかみなさん、自分なりにできるだけ楽しく、できるだけ大きく踊ってみてください」




・忘れていた何か?

そうして本格的だった劇団出身のエリ先生のジャズダンスのクラスが終ってしまいました。すぐに帰ろうとするエリ先生にみんなで花束を渡します。そして私が、みんなに書いてもらったエリ先生宛てのメッセージカードを読み上げます。でも読みながらみんなのメッセージに驚きました。

「先生のレッスン、大好きです」

「真剣に教えてくださる気持ちがうれしかったです」

「あふれ出る情熱にいつも刺激をいただきました」

「踊りがどういうものか伝わってきました」

「いつも熱いレッスンに感動していました」



・・・エリ先生も

ちょっとジーンときた感じだったけれど、それ以上に読んでいる私の胸にグッと来て、涙ぐんでしまって読むのが難しくて途中で詰まってしまう。



普段言い過ぎで少しはみ出しているけれど、エリ先生のダンスに対する熱い真っ直ぐな思い。エリ先生の思いと心は、みんなに伝わっていたようです。そういえば私も、今回は一生懸命頑張って、それでもダメだった悔しさを久しぶりに味わった。ずっと長い間忘れていた大事なことに気付かされました。



そうしてエリ先生のジャズダンスのクラスが終わって、ちょうど1年続いた私のジャズダンス挑戦も終わってしまいました。もう一つの別のジャズダンスのクラスもあるのですが、もう出ていません。どうも今のところはヒップホップのダンスの方がまだ向いているようなのです。

でも、エリ先生のクラスが復活したら、また挑戦しますよ。エリ先生のレッスンなら別です。もちろん今度はセクシーダンスだってちゃんとやります。




(おしまい)


JUN