JUNの教養メモ;ヨーロッパは石灰岩系の文化?(建築と美術) | 嶋崎JUN(ソングライター&国際派不動産コンサル)

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JUNの教養メモ;ヨーロッパは石灰岩系の文化?(建築と美術)

(自著「ゴルフ場のカレーはなぜ・・・」より一部抜粋しました)


・石灰岩系の大理石文化

ヨーロッパは隆起した褶曲山脈の地勢ですね。つまり石灰岩系の土地で、山もビーチも白っぽい。外壁の白いスタッコ、フレスコ画に大理石建築。また、ワイン用のブドウ畑やチーズの洞窟。どれも石灰岩に根ざした地域文化です。そんな風に思ったことはありますか。

石灰岩は、ライム・ストーン(石灰岩)から始まって、縞柄のトラバーチンときて、更に熱や圧力が加わって、柱にも彫刻にもいい、ちょうどいい柔らかさの大理石(マーブル)になります。

大理石は、日本では中国雲南省の大理(ターリー)地方から来たので、大理石と呼んでいます。花崗岩も日本では神戸地方の御影町から採れたので御影石と呼んだりします。ちなみに大陸移動の地球のプレートは玄武岩(ベソロク)だと思っていたら、実は花崗岩(グラナイト)でした。




・都内でも見かける大理石

都内の建物で本当に大理石はあちこち周りでよく見かけますね。紀尾井町や銀座のブルガリの店も、ピンク色の入口外壁はロザート・ペルリーノというイタリア北部で採れる大理石です。

明治、大正時代の日本橋の三越や三井系のビルのベージュ色の内装材は、フランスのトラバーチンの山を一山買って使ったそうです。

六本木のテレ朝のビルのピンク色の外壁大理石は、それほど高価な石には見えませんが、とてもきれいですね。やはり山ごと購入したのでしょうか。

汐留の電通ビルは、こちらは正確には大理石ではなくて、緑色のグラナイト(花崗岩)ですが、ゼネコンの大林組がやはりインドの山を買って切り出してきて使ったそうです。

大理石に詳しいと、ヨーロッパだけではなくて、日本の街を歩いていても面白い。




・インドの田島ハルさん

大理石で世界的に人気の建造物というと、やはりインドのタージ・マハール霊廟でしょうか。ギリシャの白大理石も有名ですが、インド産の白大理石も美しい。インド赤砂岩の塀を通って門をくぐるとそこに巨大な白亜の霊廟が現れます。圧倒的なスケール感だけではなくて、装飾のペルシャ風のディテールも本当に綺麗ですよ。なお、親父ギャグでは、タージ・マハール霊廟のことを「田島ハルさん」と呼ぶのですが、日本人のオジさんに一度教えて上げると、喜んで何度でも繰り返します。お~い! 




・スタッコ、フレスコ画とテンペラ

さて、石灰岩ですが、特に南欧では建築の外壁によく真っ白い漆喰厚塗りのコテ仕上げ、つまりスタッコを使いますね。パリなどでも本当に日常で、都心の建物補修にトラバーチンや大理石の粉を使っているのを見かけます。

絵画では、漆喰が生渇きの時に顔料でペイントするフレスコ画ですね。水には溶けなくなって、半永久的に色落ち退色しません。フレスコ画って、日本の銭湯のペンキ画に似たような感じ?

でも生乾きの時に画くのがとても大変なので、その後、乾式画法としてを混ぜて画くテンペラという画法が出てきました。卵が乳化剤として作用します。インドの中世のアンベール宮殿でも内壁の塗装にテンペラのペイント技法(卵混ぜ)が一部使われていました。そして今で絵画は便利な油性絵具にとって変わりました。


ダビンチの最後の晩餐
 ダビンチの最後の晩餐もテンペラ画です。フレスコ画ではなく当時の最新画法を取り入れたテンペラで画いたので、それが裏目となって残念ながら色落ちしてしまいました。テンペラ画の代表作、ボッティチェリの描いたビーナス誕生のようにキャンバス画ならいいのですが、スタッコの湿気が内側から長い時間かかって出てくるので、壁画の場合は長持ちしなかったようです。とても残念ですね。


・イスタンブ―ルのアヤ・ソフィア聖堂もペイント補修?

でも、何といってもヨーロッパの石灰岩や大理石の文化で驚くのは、フォー・フィニッシュです。つまり石模様のペイント擬似仕上げ。建物を大理石で装飾すると豪華ですが、天井などに大理石で装飾するのは無理がありますね。でもヨーロッパ人はどこにも使いたいくらい歴史的に石目が好きなようです。だからベルサイユ宮殿もどこでも、大理石模様の擬似ペインティング技法が超高級施設のいたるところで使われています。擬似ペインティングと言っても、これは紛れもないヨーロッパの独特の芸術です。意外と日本人には知られていないかも知れません。

例えばイスタンブールの中世の世界の7不思議に数えられるアヤ・ソフィア大聖堂ですが、現地では大理石部分の歴史的な補修もフォー・フィニッシュをしていました。勿論、オリジナルの大理石の入替えなど不可能だからですが、日本人が歴史遺産の無垢の大理石を「ペイントで補修している」と聞いたら驚くと思います。でもヨーロッパでは歴史的に確立された文化技術です。




・モナコ王国のオテルド・パリ

モンテカルロF1レースで有名なモナコ王国の オテルド・パリというホテルがフォー・フィニッシュの作品(?)で有名です。ホテルの目の前がF1レースのコースの一番の高台で、ホテルを巻くように抜けて行って、狭くて急な名物のヘアピンの下り坂になります。そういう立地の超のつく高級ホテルなのですが、実はこのホテルのロビーは、絢爛豪華にして華美な壁から天井までの装飾、彫刻が、すべて大理石の粉に顔料を混ぜて画いたフォー・ペインティング技法で仕上げられています。ロビー自体が芸術作品になっています。

胸の高さまでが本物の大理石を使っていますが、手の届くところを叩いて見ると、無垢の自然石とスタッコの違いがやっと分かります。でも目で見ただけでは全く分かりません。もしモナコ王国に行く機会があったら必見です。ただ、超高級ホテルなので、ロビーでフラッシュ撮影は止めた方がいいかもしれません。変な東洋人としてホテルの人から叱られますよ。私のように。




・モナコF1グランプリ

なお、03年FIモナコGPを観戦しましたが、熱狂的なファンの方には申し訳ありません。ブログにも書きましたが、残念ながら私は車にあまり興味がないのです。BMWチームやシユーマッハというドイツ人がとても注目されていたのですが、モナコはコースが難しいのと、解説者がピットインの差がなくなったと言っていました。ポールポジション通りに走り抜け、周りにはクレーンが用意されていて、事故用のフェンスに囲まれている。エンジン音がすごくて耳を塞いで、終わった後は千切れたタイヤのゴムがコース散らばっている。私にはFIGPって、それだけだったのです。もっとも、ホテルを抜けた後の下り坂のへアピンって、乗用車でさえも厳しいような坂なのに、あんな大きな車であのスピードで下りて行く。まるで奇跡のようではありました。それにモナコの街のコースのトンネルは、トンネル側面の壁のライトの点滅でFIレース時の車のスピードが実感できるようになっています。光の点滅が我々を追い越して行くのですが、そのスピードがやっぱりすごいことはすごい。


JUN (なおこれから月末まで、海外取材?に行ってきます~)