潤智のお話です。
嵐のいちご好き、雑食の方、大歓迎です。
夜は、特別な用事が無ければ、いつものカフェに行く。
静かに飲むか、食事をするか、マスターと話すか。
マスターは、余計な事は話さないけど、人生のヒントをくれる時があるし、互いの素性を知らないからこそ、話せる話もある。
その店は、小さな雑居ビルにあって、看板も、わざとなのか、目立たない。
ほとんどが顔馴染みなのに、今日は、初めて見る男がいた。
カウンター席で、左足だけ足置きにかけて、右足をブラブラさせている。
酒を飲んでるから、大人に決まってるのに、動きが幼い感じがする。
ちょっと、興味が湧いてきた。
空いている左隣に座って、顔を見て驚いた。
たまに見る夢に出てくる男だ。
男なのに、綺麗な顔をしている。
目は、パッチリしてるけど、目尻にかけて細くなり、少したれてる。
鼻筋が通っていて、唇が厚く、イケメンと言うより、美人と言う感じ。
じっくり観察していたら、冷たい顔がこちらを向いた。
「何?」
「いや、見慣れない顔だと思って。」
男は、一瞬、俺を見たが、すぐにテーブルに置かれたカレーを食べ始めた。
「まずは、ビールでしょ。」
カウンターの中から、マスターがビールを出してくれた。
いつも、ビールを1杯飲んでから、食事か、酒か考える。
「俺も、カレーをもらおうかな?」
カレーの匂いにつられて、腹が減ってくる。
すぐに出てきたカレーを、食べようと思って、スプーンを持ち上げると、スプーンの下の紙に、何か書いてある事に気がついた。
《隣の客、訳ありみたいで、拾ってきた。今晩、ここに泊める予定》
マスターのお人好しが始まったな。
でも、子猫じゃあるまいし、成人男性を拾ってきたって。
一口、カレー頬張る。
「美味しい。」
「美味しいだろ。」
マスターが、ドヤ顔をしてみせる。
隣の男は、黙々と食べている。
「ねぇ、どこに住んでるの?」
男は、チラリと俺を見るだけで、返事はしない。
「ねぇ、いくつなの?20代前半くらい?」
今度は、ギロリと睨まれた。
「カレー、好きなの?」
「うん。」
可愛いらしく頷いた。
やっぱり、夢の中の彼だ。
「あのさ、今晩、家に来ない?
ベッドは、シングルだから狭いけど、ソファが、背もたれを倒してベッドに使えるタイプだから。」