飲み終えた缶コーヒの空き缶をごみ箱に放るおじさん。
手元が狂ったのか、強風のせいか、缶はごみ箱の縁に当たり地面に落ちる。

慌てて拾おうとするおじさんだが、あと数センチのところで強風は缶をさらって行く。

ちょっとみっともない走り方で缶を追うおじさん。

届きそう。届かない。届きそう。届かない。


その後おじさんが缶を拾うことが出来たのか、

諦めて帰ったのか、

今もまだ追い掛け続けているのか、

僕は知らない。


ただ二度と会うことはないあのおじさんの印象は、僕にとっては「缶を追い掛ける人」。


人はどんな性格でどんな経歴があろうと、本人以外は実際に目にした部分でしか評価できない。

自分がどんなに努力しようが、どんな正義を翳そうが、第三者が知るのはほんの一部。

酔っ払ってたまたま描いた絵が売れれば天才。

家族を守るため人ひとり殺せば殺人者。


あのおじさんの家族構成も職業も何も知らないが、僕から見れば「缶を追い掛ける人」。