時間を見つけては書き進めていた小説が、20日(金)に完成しました。
ある文学賞に応募しようと思っていました。
原稿を閉じ、封筒に入れ、出版社の住所を書き、封をして、切手を貼り、あとはポストに投函するだけでした。
前日まで、ぼくは迷っていました。 小説を完成させてしまうことを、迷っていました。
この小説が完成してしまったら、すべてが終わってしまうような気がしていました。
この小説が完成してしまったら、心の拠りどころがなくなってしまうのではないかと思っていました。
でも、この2日間の出来事が、ぼくの意識を変えました。
ひとつのことが終わるということは、次の新しいひとつが始まる、ということなんですね。
期せずして、次の一歩を踏み出そう、というその時に、小説が完成しました。
原稿の入った封筒を目の前にして、ぼくは胸が熱くなりました。 なぜなのかは自分でもよくわかりません。
ぼくは原稿を会社近くのポストには投函せず、カバンに入れて持ち帰りました。
帰りの電車の中で毎日毎日読み返しては修正をしていた小説が、あとは投函するだけになっている。
ぼくは、まるで別れを惜しむかのように、カバンの上に両手を置いていました。
「小説、完成した」
電車の中から、ぼくが小説を書いていることに興味を示していた長男にメールをしました。
しばらくすると、長男からメールが返ってきました。
「おー!」
電車の中で、ぼくはまた胸が熱くなりました。 長男が小説の完成を一緒に喜んでくれている。
「駅のポストに投函して帰る」 とぼく。
「忘れんなよ」 と長男。
地元の駅に着き、改札を出て、カバンから封筒を取り出す。
駅前のポストの前で、ぼくは、封筒を抱き締めて、すべてに感謝をしてから投函しました。
翌21日土曜日、ひとつのことを終わらせ、新しい始まりを迎えた最初の日は、妻の誕生日でした。