電車は多摩川を越えると、地下にもぐって行った。
30分ほど揺られて、いつもの下車する駅に到着した。 その間、外の様子はまったくわからなかった。
エスカレーターに3つ乗って地上に出た。 家を出たときより風は弱くなっていたが、雨は強くなっていた。
事務所は、ここからJRに乗り換えた一つ隣の駅にあった。 歩いても15分で行ける距離なので、雨の日
以外、ぼくは往復歩いていた。 この雨と風ではどうしようもなく、ぼくはJRの駅へと向かった。
事務所に着くころには、ビチョビチョに濡れていたズボンの裾も、車内の熱気と自分の体温でほとんど乾
いていた。
ぼくは一息つくと、妻の携帯にメールをした。
- いやぁ、まいったよ。今日は家でおとなしくしてたほうがいいよ。
妻からの返信は、思ったよりも早かった。
- うん、夕方からもっとひどくなるって。今日は早く帰ってきたほうがいいよ。
- うん、できるだけ早く帰るよ。ケンとリョウは?
- ケンは今日は家にいるんじゃない?この嵐じゃダンスの練習はないでしょ。リョウは午後から同窓会。
リョウは2週間前に中学を卒業し、今週の土曜日が高校の入学式だった。 「同窓会」というのは、いつの
「同窓会」だろうか、小学校?それとも中学校?
幸いにして、その日は外出する予定はなく、仕事もそれほど忙しくはなかった。 昼食も事務所の入って
いるビルの1階にある「松屋」で済ませた。
妻の言っていたとおり、午後になると時間の経過とともに、雨と風は強さを増していった。
午後5時を過ぎると、空は夜のように真っ暗になり、雷までも鳴り出した。
帰り支度を終え、あとはパソコンの電源を落とすだけ、というタイミングで顧客からの電話につかまってし
まった。 結局事務所を出たのは午後7時過ぎだった。