何かが変わろうとしていた。
何かを変えようとしていた。
エツが、ミホの背中を押してくれた。
エツに会いたかった。
エツに伝えたいことが、ミホにはたくさんあった。
ミホは久しぶりにチャットを訪ねた。 エツの“部屋”はなかった。
ミホは“部屋”を作って、エツを待った。毎日、待った。
『合言葉』に答えられないたくさんのエツが、途切れることなく“部屋”に入ってきた。
それでも、ミホは待ち続けた。
窓を開けて、空を見上げた。東の空にオリオン座が、頭上には北極星が輝いていた。
この同じ空の下にエツがいる。横浜からでも、オリオン座はやっぱり東の空にあるのかな。
今朝降った初雪が、月の光を浴びて青白く光っていた。
エツ、仙台は初雪が降ったよ。
ミホのつぶやきは白い息とともに夜に消えた。
ため息はつぶやきよりももっと白く、なかなか夜に溶けなかった。
水曜日、ミホはカルボナーラを作った。上手にできた。
エツを待った。
二杯目の赤ワインを注ぎに立ったとき、アラーム音が鳴って、誰かが“部屋”に入ってきた。
エツ(26)さんが入室しました。
エツ>こんばんは
ミホ>・・・しょっぱいカルボナーラには?
エツ>赤ワインが合う。
ミホ>エツ、会いたかった。
エツ>こんばんは、ミホさん。
ミホ>わたし、エツのこと待ってたんだよ。毎日こうして待ってたんだよ。
エツからの返事はなかった。
ミホは混乱していた。何から話したらいいのかわからなかった。
ミホ>エツ、仙台は今朝雪が降ったんだよ、初雪だよ。それから、そう、わたしね、エツの
ライブに行くことに決めたんだ。
エツ>ミホさん、ごめんなさい。ぼくはエツの弟です。