エツ>そっか。まだ夏休み中かな。
ミホ>来週から後期の授業が始まります。
エツ>いいねぇ、青春のキャンパスライフってやつだ。うらやましいな。
大学での専攻、特売だからと買いすぎた玉ねぎ、しょっぱくなったカルボナーラ・・・・。ミホは
自分でもびっくりするほどよくしゃべった。チャットとはいえ、こんなに長い時間、人と話すのは
久しぶりだった。しかも、相手はどこの誰なのかもわからない男(たぶん)である。さらに、驚く
べきことに、ミホはすべてのことを真面目に、正直に話していた。
エツ>もう9時か。そろそろ寝なくちゃ。ミホさん、ありがとう。楽しかった。
ミホは話し足りなかった。もっとこの人と話がしていたかった。でも、相手には相手の都合が
ある。無理に引き止めるわけにはいかない。
ミホ>わたしも楽しかったです。エツさん、ありがとう。
また一人になるのかと思うと、ミホはむなしくなった。もうすぐ、この“部屋”は閉じられる。
エツ>もっとミホさんと話したいんだけど・・・・また会えないかな。
うそ?!エツさんもわたしと同じ気持ち?!
ミホ>はい。わたしもエツさんともっと話がしたいです。でも、わたしでいいんですか?
エツ>うん。ミホさんと話したい。毎日は無理だけど、夜7時前には今日みたいに部屋を作っ
て待ってるから、ミホさんの都合のいいときに来てくれる?!
ミホ>はい。わかりました。
暗くなった画面に映る自分の顔を、ミホはしばらく見つめていた。またエツさんと話ができる。
そう思うだけで、顔が火照ってくるのが自分でもわかった。こんな気持ちは初めてだった。
グラスのワインを一気に飲み干すと、ミホは立ち上がり、時間を確認した。もうすぐ彼からの
電話がかかってくる。気持ちを切り替えないと。ミホはバスルームへと向かった。