傾いたマンション問題とセックス・ピストルズ | 語り得ぬものについては沈黙しなければならない。

傾いたマンション問題とセックス・ピストルズ

横浜市の「傾いたマンション」問題。

「報道ステーション」で杭打ちを行った旭化成建材の記者会見やってたが、彼らの言い分が、なんかものすごく変だった。
ニュース動画探したけれど見つからないので記憶で書くが、データ改ざんをしたとされる現場管理者に対して、旭化成建材の幹部クラス(要するに記者会見に出てくるような奴)が、
「彼は事務処理に関して雑なところがあった」
みたいなことを言っているのだ。

おいおいちょっと待てよ。
まるで、旭化成建材の幹部は「悪いのはその担当者で、自分だって被害者だ」と言わんばかりじゃないか。

データを改ざんしたとか嘘をついたとか、そういった個人の責任を問うことはもちろん必要だ。だが、「たまたま悪い奴がいて、そいつの責任だ」とさせてはならない。

ゼネコンの孫請けのような形で仕事をしている土建関連会社の人が、今回の事件について「フツーによくある話だろ?」と言っていた。
きちんとした裏がとれていないので具体的なことは書けないけれど、「工期を延長するなんてあり得ないからな」と言う。
たとえば、用意した杭の長さが足りないということが現場で発覚しても、工期を延ばし新しい杭を発注したりすれば、会社は儲けにならないばかりか大損で、やっていけないというわけだ。

つまり、今回の事件に関して言えば、会社(旭化成建材)が、担当者の首を切ったり彼に賠償を請求したり刑事責任を問うことはあるのだろうが、そんなことじゃ再発は防げませんよ、ということである。

もちろん、旭化成建材だけの話ではない。
個人を罰しても、システムが変わらない限り、再び不正をする奴がどこかの会社で必ず現れる。

これは、下請け孫請けといった利益配分構造の問題かもしれないし、業界で慣習化された別の問題が温床なのかもしれない。
いずれにしても、個人に責任を押しつけて一件落着としてはいけない。
問うべきは(社会)システムである。

なんだか、中学生に社会科を教えるような基礎的な話なのであるが、どんな事件でも「現場の個人や一部の跳ね上がり分子の責任」で片付けてはいけないというのは、何度でも再確認すべき問題だ。

いくらでも例は出せるけれど、たとえば「イスラム国」だってそうだよ。
米国は「イスラム国」の自称カリフ、アブ・バクル・アル・バグダディを暗殺するために毎日、ドローンを飛ばして空爆を行っている。
なので、ウサーマ・ビン・ラーディンのときと同様、いずれ米国はバグダディを殺すであろう。だが、これもウサーマ・ビン・ラーディンのときと同様、彼を殺したからと言って中東のテロがなくなるわけではない。
システムを根本的に変えていかない限り、すぐに誰か別の人物がテロ組織の主導者になるのは目に見えているのだ。
そうやって、蟻地獄にはまっていく。

ええとさあ。
この一週間くらい、なんかすごくバタバタしていて(あ、これは僕の個人的な話)、そうすると無性に、筆のゆくまま的テキトーな文章を書きたくなる。
今夜もその一環なので、雑な文章でごめんよ。

でも。「個人の責任」「組織の責任」「システムの責任」あるいは「国家の責任」「国民の責任」といった話は大変重要なので、今度時間があるときにきちんと書きます。
それに絡んで、「SEALDs奥田君はなぜスターなのか問題」といった、みんなが興味津々の話もきっとあるよ。

というわけで、悪いがここからは別件。

3チャン(Eテレというのは昭和の俺には今でも馴染まない…)の「ミュージック ポートレイト」と言う番組( http://www.nhk.or.jp/portrait/ )で、みうらじゅんさんと関根勤さんが、それぞれの「人生の10曲」を語っていた。これがまた、僕の琴線直撃なのでした。

みうらさんは1958年生まれで僕よりも5つ年上だけど、まあだいたい同じ時代を生きてきた人だと言える。
1980年代にイラストレーターとしてそこそこの成功を収めていたみうらさんだったが、「これでいいのかな」と自問していたという。

というのは、みんなにわかりやすく僕が翻訳したことばであって、番組でみうらさんはそこのことを、「俺はNo Futureの側じゃなかったのか?」ということばで語っていた。

ごめん、これは若い子にはわからないかもしれないのだけれど、思春期にSex Pistolsをリアルタイムで聞いた我々にとって「No Futureの側かどうか」は、己の生き方を考える上で決定的に重要な問いである。
今の子にもわかるように翻訳するのはとても難しいのだけれど、直訳すれば「お前はパンクか?」と聞いている。

俺は死ぬまでNo Futureの側にいたいぞ。
ていうか、じゃなきゃ生きてる意味ないじゃん。

酔っ払ったので今夜はここまで。

聴け。