沖縄ブラックホーク・ダウン~"We got a Black Hawk down" | 語り得ぬものについては沈黙しなければならない。

沖縄ブラックホーク・ダウン~"We got a Black Hawk down"

沖縄県うるま市伊計島沖約14キロで、米軍ヘリが墜落した。
沖縄での米軍機の墜落は、1972年の本土復帰以降43年間で46回目。要するに毎年墜ちるというような状況である。

ちょうど11年前の8月13日には、なんと大学の構内に米軍ヘリが墜落した。沖縄国際大学には今でも、墜落で焼けたアカギの樹が残されている。

沖国大ヘリ墜落現場01

下の写真のように、校舎をこれだけ焦がすほどの事故だったのだ。
沖国大ヘリ墜落現場02

町のど真ん中での墜落事故。民間人に死亡者、負傷者が出なかったのは奇跡的だと言えよう。近くの民家、保育所などにも事故機の部品が落下しているのだ。

で。

ここは日本国内なのだから、当然、日本の警察や消防が駆けつけて、救命、消火、事故調査に乗り出すと思うでしょ。
ところが米軍がそれを阻止したのである。
米軍は、大学関係者も沖縄県警も現場に立ち入らせず、事故機と、さらに墜落現場の土まで掘り起こして持っていってしまった。

このヘリの部品には、放射性物質「ストロンチウム90」が使われている。
放射線はモノを通過する。その通過の影によって(レントゲン検査のように)目には見えないモノの内部がわかる。機体には「ストロンチウム90」の出す放射線でローター(羽)の傷や劣化などを点検する機能がついていたのだ。

軍用ヘリが墜落した場合、軍はただちに機体を回収する。あるいは、敵地などで回収が不可能な場合には機体を爆破する(ヘリには爆破装置がついている)。軍事機密があるからだ。沖縄国際大学ヘリ墜落事件のとき、米軍が機体だけじゃなく墜落現場の土まで持っていったのは、放射線物質が飛散したのを隠すためだ。

市街地にヘリを墜落させて、その上放射能汚染の証拠隠滅を図るなんて、米軍はあまりにも身勝手じゃないか!
と思う人もいるかもしれないが、それより悪いのは日本政府である。
日本は「日米地位協定」によって、米軍のそんな行為を認めているのである。

長くなるので詳しくは書かないけれど、「地位協定」というのは二国間の権利や義務などの地位を定めた協定。
70年前の戦争に負けた日本は、米国が圧倒的に有利な「地位協定」を結んだ。それによって今でも、日本国内での米軍の好き勝手が協定上許されている。

沖縄以外の本土にいるとあまり感じないかもしれないけれど、米軍基地だらけの沖縄ではそんな理不尽が今でも日常だ。

一昨日の米軍ヘリ墜落事件も同様である。
日本の領海内で航空機の重大事故が起きたのだから、本来、海上保安庁が乗り込んでいって捜査すべきことである。これが民間機なら、国交省の出番でもある。

ところが米軍は、とっとと事故機を持っていってしまった。
日本政府は「事故機を見せろ」「現場検証させろ」というような、当然の権利も主張できない。
主権国家として、これはいかがなものか?

第二次大戦の敗戦国と言えば、悪の枢軸、日独伊であった。というわけで、イタリアやドイツも、米国と不平等な地位協定を結んだ。しかしどちらの国もその後協定の改定によって徐々に不平等をなくしている。

ドイツでは、米軍機に対しても他の航空機同様にドイツ国内法が適用され、飛行禁止区域や低空飛行禁止が定められている。イタリアでは、駐留米軍が軍事訓練や演習を行う際には必ずイタリア政府の許可が要る。ところが日本だけは未だに、米軍機はどこをどのように飛んでも良いという不平等地位協定を変えようともしない。
どうしてこんな無様な状況になっているのかというと、政府も国民もずっと「それでよし」としてきたからである。

安倍晋三君は「戦後レジームからの脱却」などというが、ほんとうに戦後レジームから脱却したいのであれば、まずは日米安保条約、地位協定の見直しから始めるべきなのだ。
それをせずに米国との集団的自衛権を認めるというのは、まさに米国の犬になると言うことである。

「国があるからこそ国民がいる」のではなく、「人々が認めてこそ国が成立する」のであるから、僕は誰かに「非国民」って言われたって全然平気だよ。でももし「非国民」ということばを使うとすれば、安倍晋三君こそまさに非国民の極みではないか。日本を米国に売ろうとしているのだ。
「安保法制は日本の安全のために必要だ」と反論する人もいるかもしれないが、米国の下請けになることが日本の安全か?
また、安倍晋三君は単なる行政府の長にすぎない。にもかかわらず全権委任でも受けた気分なのだろうか、立法府を完全に無視し、国会での法案審議前に米国国会で日本国内法の成立を勝手に約束したわけだ。どう考えたって日本の国会が先だろ? こういうのこそ売国奴と言うべきではないか。

さてと。

例によって酔っ払って書いているので、文章に脈絡がなくてごめんよ。

一昨日伊計島沖に墜ちた米軍ヘリは「MH-60L」、通称「ブラックホーク」。米陸軍の特殊部隊「デルタ・フォース」の装備である。

"We got a Black Hawk down.
We got a Black Hawk down"

米軍の有名な無線交信だ。
1993年10月3日、ソマリア内戦に介入した米軍は、「デルタ・フォース」など特殊部隊の急襲で敵中枢を捕らえる作戦を実行に移した。

無血の30分で終わるはずであった。しかし「ブラックホーク」二機が撃墜され作戦は失敗。"We got a Black Hawk down"はそのときの交信だ。「モガディシュの戦闘」と言われる市街戦で、米兵18人が死亡。市民の死者は数百人とも千人以上とも言われる。

それを映画化したのがリドリー・スコット監督の『ブラックホーク・ダウン』。
東西冷戦後、国家間ではなく対ゲリラ戦へと様相を変えた戦争の現場だ。


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戦争映画の名作は、極限を描く。だからこそ、観るとほんとうに戦争は御免だと思わされる。
日本の戦争映画は情緒的に軍人の「生き様」を描く作品も多いが、『ブラックホーク・ダウン』はそんな感傷を排して最前線を冷徹に描く。だからこそ怖さが伝わってくる。

安倍晋三君の安保法制案に反対する人を「平和ボケ」とか言う人がいるが、『ブラックホーク・ダウン』を観なさい。「平和ボケ」とは戦争のリアリティを想像できない人のことだ。こんな戦争に加わりたいか?
現状の日米不平等安保体制の中で、地球の裏側まで行ける集団的自衛権を認めるというのは、法理上それを許すと言うことである。いくら「政策上ありえない」と言ったところで、「法」とはそういうものではない。

沖縄でMH-60L「ブラックホーク」が墜ちたと聞いたとき、まっ先に頭に浮かんだのが、"We got a Black Hawk down.We got a Black Hawk down"の交信であり、そして、その後の地獄絵であった。