マック「ポテトSだけ問題」は、日本の将来の問題である | 語り得ぬものについては沈黙しなければならない。

マック「ポテトSだけ問題」は、日本の将来の問題である

昨日のニュースではあれだけ言っていたのだからもうちょっとそういう話が出てくるかと思ったのだが、さっき「マック ポテト TPP」で検索したらそれらしいのがほとんど出てこなかったので書いておこう。

マックフライポテトの原料は米国から輸入しているわけだが、輸送ルートの米国西海岸の港で労使紛争があって、芋が日本に入ってこない。足りなくなってしまった。そのため日本マクドナルドでは「安定的な調達のめどが立つまでの期間」(同社HP)、ポテトはSサイズしか売らないことにした。

ニュースでは「Sサイズじゃ物足りないので二個買ってしまうかもしれません」と言ってる町の声や、ご丁寧にグラム単価を計算して「Lサイズ分食べると割高になる」とか報じていて呆れてしまったのだが、そんなことはどうでも良いのだ。

西海岸の港の労使紛争なんて、知ってた人いるかい?
そんな、これまで誰も知らなかったような出来事でマックは大騒ぎだ。(日本マクドナルドでは、港が駄目ならということで芋を空輸するらしいが、ものすご~~~~~く高くつくはずだ)

輸入に頼るからこの始末なのである。

もちろん、マックのポテトが食べられなくなったってそんなに困る人はいない。
でも、豚肉も牛肉も小麦も食べられなくなったらどうするのか?

今回の出来事で考えなければならないのは、食糧自給率の低下はものすごいリスクだと言うことだ。

農水省のHPから持ってきた食糧自給率の図。(http://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/011.html

日本の食糧自給率
「港の労使紛争」ならまだ良い。だが、どっかの国が「日本には食料を輸出しないよ」と言い出したらどうなるのか?
「西側先進国はそんな意地悪はしない」という人がいるかもしれない。だけど世界規模で見ると人口はどんどん増えているのだよ。輸出国が優先的に日本に食料を売ってくれるなどと言うのは甘いのではないのかな。

食料というのは国家の安全保障の大きな柱なのだ。安全保障というと軍事のことだけと思う人がいるが、食料やエネルギーもそれと変わらない大事な問題だ。(これはまた別の機会に)

自給率が低いと兵糧攻めに遭うぞ。大袈裟に聞こえるかもしれないがそうではない。国民の生命線を外国に握られてしまうと言うことだ。

TPPに賛成する人たちと話していると「農協の既得権益が薄汚い」とか「農家は努力せずにカネをもらっている」などという。
そうかもしれない。
けどさあ、これは国内問題として考えるべき話なのである。「農協憎し」の気持ちもわかるが、だからといって規制緩和の名の下に荒療治を施せば、日本の食糧自給率はどんどん下がる。
だって米国なんてあの広い領土がほとんど畑ばっかで、そこを農業メジャー(大資本)が超低コストでどんどん耕しているわけだ。価格競争で日本の農家がかなうわけがない。

「ブランド力を高めていけば良い」という人がいる。
もちろん日本には、とても美味しくて質の高いブランド農作物がいろいろある。
なんとか牛とか、なになに苺とかさ。梨も林檎も豚も鶏も、なんでもある。
でも、みんなそれをいつも食ってるの?

「農家が経営努力して農作物の質を上げるべきだ」というのは別に良いのだが、だからといってブランド品が日本人の毎日の食卓にあがる食べものになるわけではない。グローバル経済の中で、そういう高級品は国内、国外の金持ちに供給されるからだ。
多くの日本人はブランド肉やブランド果物を毎日食べることはできないわけで、結局外国産の安い肉(自給率8%)や安い果実(自給率39%)を食べざるを得ないのである。

マックフライポテト事件の本質は、「TPPなんかやったら、肉も小麦も大豆も乳製品もこうなりますよ」という話である。

それにしても「日本を取り戻す」と言う安倍晋三君がTPPに乗り気なのが不可解極まりない。食料という大事な安全保障の首根っこを外国に掴まれて、ますます弱い国になるぞ。