日本だって北朝鮮 | 語り得ぬものについては沈黙しなければならない。

日本だって北朝鮮

年末でなにかとバタバタしてしまっているのだけれど、息抜きにちょっと書くね。

歳とともに集中力が著しく欠如して、仕事しててもすぐ疲れてしまうので、テレビのニュースなんかを見る。
猪瀬直樹はもういいよ。ああいう小さな人間を総攻撃したって、何も変わらない。
それより北朝鮮。

ナンバー2と言われていた張成沢元国防副委員長の突然の失脚と即日の処刑。
野蛮な国だなあとつくづく思う。
北朝鮮国内の政治力学について具体的なことを僕は知らないのだけれど、これだけは確かなのは、金正恩もしくは軍部の誰かなのかもしれないが、要するに自分の「立場」を守りたい連中、自分の「立場」を確保したい連中にとって、張成沢は邪魔になった。あるいは邪魔になるかもしれなかった。だからそんな連中がつるんで、張成沢を吊し上げた。
ここには「正義」や「倫理」の観念はおろか、「国益」の観念すらない。と僕は思う。
あるのは「保身」と「欲」だけだ。
そんなのがまかり通ってしまうのだから、北朝鮮は恐ろしい。

でね。
僕が言いたいのは、同じことがこの日本でも、今まさに行われている、ということなのです。

経産省の「総合資源エネルギー調査会基本政策分科会」が「エネルギー基本計画」をとりまとめ、政府は年明けにでもそれを閣議決定するというのだが、まったくもってひどすぎる。
原子力を「エネルギー需給構造の安定性を支える基盤となる重要なベース電源」と位置づけ、再稼働どころか、原発の新設まで良しとするような内容なのだ。

福島第一原発事故は収束するどころか汚染水垂れ流しが続き、今でも10万人以上の人々が理不尽な避難生活を強いられている。どの世論調査を見ても過半数が「原発ゼロを目指すべき」という中で、「エネルギー基本計画」が原発推進のレールを引こうとするのはなぜか?
その答は簡単で、「原発をやめたら困る」立場の連中がいるからである。
しかも、「総合資源エネルギー調査会基本政策分科会」の事務局を努める資源エネルギー庁(経産省の外局)が、まさにそんな「原発やめたら困る」連中なのだ。
潤沢な「電力マネー」を背景に、電力会社と癒着し、築き上げてきたのが彼らの「立場」だ。原発をやめたらそれが崩壊してしまう。だから彼らにしてみれば脱原発は断固阻止せねばならない、ということになる。

「原発をやめたら日本経済は立ち行かない」などという馬鹿げた議論についての反証は面倒臭いからここでは書かない。ただ、「左派」と言われるような論客ではなく、資本主義的、自由主義的な経済専門家からも、原発は反経済的だという「脱原発論」があちこちから持ち上がっている。あの小泉純一郎ですら、「原発は即ゼロ」と言っているのだ。

東電は「再稼働しないと会社が潰れてしまう」とあからさまに言っているが、一企業が潰れるかどうかなんて知ったこっちゃない。駄目な企業が潰れるのは資本主義のルールであって、そのルールに合意したからこそ株式上場しているのだから、実質的に債務超過の東電なんか潰れるべきなのだ。
それでも、自分の立場を守りたい連中が、必死に自己保身を図っている。
それが東電の姿であり、同様に経産省、あるいは資源エネルギー庁とかの「原発やめたら『俺』が困る」連中の姿なのである。
だからこそ彼らは、なりふり構わず原発推進案を打ち出してくるのだが、それってまるで北朝鮮だ。
マシンガンぶっ放して処刑、みたいな派手なことをしないから目立ちにくいが、根本的には、金正恩体制で自分の「立場」を守るためには手段を選ばぬ北朝鮮の政治家、役人、軍人と一緒である。

もうひとつの話。

処刑された張成沢は金正恩の側近であったので、金正恩と一緒に映っている映像なんかもたくさんある。
ところが、北朝鮮当局は、そんな「公式映像」から、処刑した張成沢の姿を一切消してしまった。
知っている人も多いと思うのだけれど、これは比喩ではなく、実際に撮影された映像を加工修正して、張成沢の姿を消してしまったのである。
たとえば、顔のすげ替え。張成沢の顔があった部分に別人の顔を貼り付けている。あるいは、映像の背景部分を引き延ばして、張成沢の姿全体を覆い隠している。
ハリウッドだったらもっと上手にやるのだろうけれど、北朝鮮の場合は映像加工が稚拙すぎて、つぎはぎがバレバレだったりする。ご愛敬。
北朝鮮国営朝鮮中央通信や、朝鮮労働党の機関紙、労働新聞のウェブサイトからも、張成沢の記事がほとんど消えたという。残っているのは彼の死刑執行を伝える記事だけらしい。

滅茶苦茶な国だ。
自国の法律に基づいて処刑した、それだけであればまだいい。だが、北朝鮮当局がやろうとしているのは、「歴史の隠蔽」である。つまり、「張成沢が金正恩の側近で、金正恩の脇に立っていた」という事実すら、「なかったこと」にしようとしているのだ。
これはあまりにも乱暴である。

そこで現代の日本の話。
僕が何を書きたいのか察した人も多いと思うけれど、特定秘密保護法だ。
政府、役人が「これは秘密」としたものを、永遠に隠蔽できる法律である。
「原則○○年で公開」とか言っているが、それはあくまで原則であって、秘密解除せずに「そんな秘密はなかったこと」にもできる。
都合が悪ければ歴史的事実も隠蔽しよう、そんな発想、思想こそ、まさに北朝鮮とそっくりなのだ。

眠いから寝るけどね、北朝鮮は愚かで出鱈目な国だと思う人は、粛清こそないものの、日本だって根は同じだということを考えたほうがいいと思うよ。