ねこの島と、ちょっと選挙 | 語り得ぬものについては沈黙しなければならない。

ねこの島と、ちょっと選挙

家に帰ったら「田代島にゃんこ共和国」(http://nyanpro.com/)からゆうメールが届いていた。

田代島というのは、宮城県の石巻湾、牡鹿半島の西側に位置する島である。

地図を見てもらえれば一目瞭然だけれど、この島も3.11の津波で大きな被害を受けた。

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島民のほとんどが漁業従事者で、なかでも牡蠣の養殖が盛んだったらしいのだけれど、養殖場はほとんどすべて、津波でやられてしまった。

Wikipediaによると、2005年国勢調査では人口112人。平均年齢71歳、高齢化率82%であり、限界集落である。
要するに、爺ちゃん婆ちゃんばかりの島であり、彼らが細々と漁業を営んで、ようやく成り立っている地域だ。
そこに大津波がやって来て、養殖や漁業の施設を根こそぎ破壊してしまったのだ。

もし僕が島民だったら、復興なんて諦めてしまうに違いない。
なにしろ(これもWikipedia情報だが)、学校もない(小学校すらない)、金融機関やガソリンスタンドもない。商店は雑貨屋が二軒だけ、au・ソフトバンクは島内に基地局もない。
もともとがそんな年寄りばかりの死にかけたような辺鄙な島だ。島を支えてきた漁業の施設が壊滅してしまったら、もう打つ手なしだ。
この島は終わった。
と、僕だったら思うだろう。

ところが、島にはたくさんのねこがいた。

たぶん人の数より多いくらいのねこがいて、多くの島民に可愛がられていた。
テレビなどでも紹介されたことにより、ねこ好きの間では「ねこの島」として有名だった。

そんな「ねこの島」が復興のための支援基金を募っている。twitterでそれを知ったのは去年のたしか6月。
集まったお金は、牡蠣の養殖場を作り直すことをメインに、島内の施設やねこの世話のためにも充てるという。

例によって深夜酔っ払ってtwitterを見ていた僕は、当時は震災直後でまだ涙もろかったこともあり、ほんの僅かな金額だけれど、その場でネットバンキングから送金したのだった。

で。
語り得ぬものについては沈黙しなければならない。-田代島にゃんこグッズ

写真の右下が、これはだいぶ前に送ってもらった「田代島にゃんこ共和国国民証」。
もうこれだけで充分だと思っていたのに、今日、にゃんこマークのミニミニポーチ(左)とねこの手ストラップ(右上)も届いたのである。
ミニミニポーチは、ぎりぎりスマホが入らない大きさなのが残念(笑)だが、可愛らしいので大事にとっておこうと思う。
なんか、養殖がちゃんと復興したら牡蠣も送ってくれるみたいな話もあった。
僕は牡蠣は大大大大大好物なのだけれど、これ以上は受け取れない。
そのときには島に行ってねこと遊んで、民宿で牡蠣を存分に食べます。そうメールしておこう。

でね。
この基金の目標額は1億円以上だった。
小さな島にしてはかなりの額に思えるかもしれないけれど、養殖場も、船も、その他の施設もほぼ全部壊滅なのだから、元通りにしようと思ったらそれ以上かかるだろう。
でも1億円集めるのは大変だよ。
島の人たちとしてみたら、たぶん、ほんとうに「あくまで目標」として設定したはずだ。

ところがどっこい、たった3ヵ月でそれが集まってしまった。
そこで、正直な島の人たちはそこで募集を停止した。かなり驚いているようだった。だから、僕が見たテレビ番組では「現在は募集していません」と出ていた。

もちろんメディアの効果が大きいだろう。
僕が知ったのはtwitterだったが、その前にメディアで紹介されていたに違いない。
なおかつ、ねことか犬と聞いただけで、僕のように貧乏なのに財布の口を緩める人が日本にはたくさんいる。
「うまいことやったな」と言われればその通りかもしれない。

だが、ねこが復興の決め手となったのである。
僕はねこが大好きだが、ねこなんて日本中どこにでもいる。
「この地域の特産です」というブランド牛やブランド豚とはわけが違う。
北海道のキタキツネとも違う。
田代島は、たんに野良猫(というのが嫌ならば地域ねこ)がたくさんいる、というだけだったのだ。
そんなものが経済に大きな影響を与える因子だとは、普通は考えない。
ねこが島を救う。そんなこと、誰か想像できただろうか?

さて。

被災地の復興については、いろいろなところでいろいろなプロジェクトが進んでいる。

僕はそのあたりの具体的な事情は具体的には知らないけれど、役人と土建屋と資本家が中心となって、どうやったら自分たちが儲かるかを考えているに違いない。漁場を株式会社に公開すべきだという議論も多いと聞く。

TPPなんかもそうだけれど、金儲けのことしか考えていない禿鷹のような資本家どもが、復興名目に地域の支配と征服を企んでいるのだ。
「復興特区」のような形で規制が緩和され、すなわち、規制が緩和されると言うことは、金さえ持っていれば誰でも自由にやれるということなので、そうなると地域は金を持っている大資本の餌食となり、本来潤うはずの地元の人たちにお金が回らず、大資本の東京やニューヨーク本社、その株主だけが良い思いをする。

なおかつ最悪なのは、いったんそういうシステムが出来上がってしまうと、そこで働いている人たちは明日の生活が大事だから、資本家や投資家の禿鷹連中がどんなに悪かを知っていても、生きるためにそのシステムを認めざるをえなくなってしまうのだ。
原発と同じだ。

ねこで1億円以上集めた田代島が、100%良い見本だとは僕も言わない。
しかし、汚れきった資本家や投資家の餌食にならずに復興のためのお金を集められたというのは、やはりすごいと思うのだ。
それも、「ブランドねこ」ではない。
「日本の雑種ねこ」たちだ。
「日本の雑種ねこ」たちを可愛がってきた島の人たちの生活があってこそ、多くの人が少しずつお金を出して1億円になったわけで、これは「金転がし」がぽんと出した1億円ではない。つまり、M&Aなどにうつつを抜かし「金がすべてだ」と思っているような投資家連中なんて一昨日来やがれという感じだな。

ねこの話は最初だけにしようと思っていたのにいつのまにか引っ張ってしまった。

家に帰ったら「田代島にゃんこ共和国」からゆうメールが届いていたわけだが、僕は郵便受けはときどきしか見ない。
なぜならば、要らないチラシやダイレクトメール、見たくない請求書しか届かないからだ。
で、久しぶりに郵便受けを見たら、都知事選の選挙公報が入っていた。

都知事選にしても衆院選にしても、今度の選挙の争点は「原発」だよ。

もちろん、ほかにも大きな争点はある。
たとえば憲法問題は、国の根本に関わっている。

でもね、やはり原発。
もう酔っ払って面倒臭いので簡単に書くけれど、
「原発問題=エネルギー問題」だと思っている人がいるけれど、そうではない。
もちろん、エネルギー問題でもあるけれども、それだけではない。

あ、僕は「命の問題」とかは言いません。
なんというのか、命とか健康とか言うのは当たり前の話なので。

格差問題。たとえば東京と福島の格差、元請け下請けの格差、正規非正規雇用の格差。
官僚問題。霞ヶ関の連中の思い上がりと自己保身を許すのか?
対米問題。米国追従の原子力戦略でよいのか。
人権問題、なんていうのもまあ当然の話。

いずれにしても、この半世紀、米国、役人、政治家、財界の思惑通りに進められてきた原子力を否定すると言うことは、腐った日本のシステムそのものに対する否定であり、つまりまあ、それこそロックンロールというものだ。

なんか酔っ払ったからこれで終わりね。

あ、そうだ。

都知事選選挙公報のなかで、宇都宮けんじさんの「わたしたちも応援します!」の中に、小出裕章さんの名前もあったよ。