【7.6総理邸前抗議デモ参加報告】非暴力。だけど「集会の自由」だけは守りきらなければならない | 語り得ぬものについては沈黙しなければならない。

【7.6総理邸前抗議デモ参加報告】非暴力。だけど「集会の自由」だけは守りきらなければならない

僕は50年近く東京で暮らしてきて、だから毎日のように地下鉄に乗って出かけているわけだが、それでも地下鉄のことはよくわかっていない。
目的地に辿り着くために、どの駅で乗り換えて何番出口で出たら良いのかとか、特に山手線の内側はほんとうに難しいのである。
なので、「総理官邸っていったい何駅?」と聞かれたら、東京都民でもわからない人のほうが多いはずだ。

答は、「国会議事堂前」駅か「溜池山王」駅。
この2つの駅はつながっている。改札を出ることなく乗り換えができる。(なら同じ駅名にしろよと思うのだが、端から端まで歩くと、地下鉄一駅分よりずっと長い距離になる)
で、総理官邸には南北線で来るのなら四谷寄りの車両に乗って山王日枝神社向かいの5番出口を使うのが良いし、渋谷方面から銀座線で来るのであれば、銀座線にも溜池山王駅はあるのだけれど、あえて赤坂見附でホーム向かい側の丸ノ内線に乗り換えて一駅、国会議事堂前駅で降りたほうが、「総理官邸前」交差点には近い。
じつにややこしい。

↓これが地図。
東京メトロwebサイトをキャプチャーしたものを加工した。
番号のついたカメラのようなマークが、地上出口である。
地図の上に書いたテキストの説明は追ってしていこう。

地図だ!


先週は南北線経由だったので5番出口から外に出たのだけれど、(この地図ではわかりづらいが)ほんとうは出口からすぐに東方向にまっすぐ登って「総理官邸前」交差点に辿り着ける道がある。ところがその道は警察によって封鎖されていたので、「国会裏」交差点のほうからぐるっと回って「総理官邸前」交差点に辿り着いたのであった。

それが面倒くさかったので、昨夜は丸ノ内線の国会議事堂前駅で地下鉄を降りた。
ほんとうはもっと早く到着したかったのだけれど、バタバタしてしまい19時を少し過ぎたころだ。

すでの改札の外は人で溢れていた。もちろん、そのほとんどがデモ参加者だ。
本来であれば1番出口か3番出口が「総理官邸前」交差点には一番近いわけだが、警察官がすべての人を4番出口に誘導していた。

国会議事堂前駅4番出口


3番出口が封鎖されてることに対して文句を言っている人もいたが、まあ上は大混雑なのだろうからそれくらいは仕方ないかなと思って、良い子に列に並んで15分くらいかけてようやく地上に出たのだった。

そこまではまあ良い。
だがそこからがいけない。

4番出口を出て左に行けば総理官邸前なのだが、警察官が歩道を封鎖して人々を右にしか行かせないのだ。(地図の①)
右に行っても何もない。
本来、デモというのは物理的に一箇所に集まることに意味がある。
警察はそれをさせまいとしている。

分断や拡散というのは治安出動の基本なので、警察はそのように対応しているわけだが、最初に言ったように、地下鉄の出口というのはとても難しい。
東京都民であっても、また僕のような方向音痴でなかったとしても、土地勘がなかったら警察に誘導されるがままにどんどん遠くへ連れて行かれてしまうだろう。
(実際にtwitter上では、せっかく来たのに「ここはどこ?」状態で声を上げることもできなかった人もいたと聞く)

その頃は、(たぶん)片側3車線の道路の歩道寄り一車線のみを警察は人々に開放していて、カラーコーンと黄色い帯で参加者を規制し、ちょっとでもカラーコーンを蹴飛ばそうものなら、たちまち警察官が駆け寄ってくると言う状態であった。

僕はデモの中心部から遠ざけられるなんて御免だったので、4番出口のすぐ近くに留まってビデオを回しながら「再稼働反対!」の声を上げていたのである。

なにしろものすごい人だから、ビデオも手を上げて上から撮らなければならない。
けどずっと手を上げているのも疲れたなあと思ってスイッチを切ったときだった。
人々が雪崩のように車道に出て、たちまち全車線を占拠した。
僕は慌ててビデオの電源を入れたがもう遅い。
その間約10秒。肝心の場面は撮れなかった。

その直後の様子。



きっかけが何であったのかはわからない。
しかしいずれにしても、警察が人々を分散させようとしていることに対して、僕と同様に多くの人が不満を持っていたのであって、だから決壊は当然の成り行きだったし、気がつけば僕も、車道の中心部にいた。

治安活動のメソッドだろう。戦争と同じで、このライン(前線)が崩されたときにはこのラインを守る、という練習を、警察官は常日頃からしているに違いない。
彼らは横並びになって、車道を埋め尽くした人々をこれ以上官邸前には近づけない、という防波堤を張った。
地図の②の場所だ。



↑このように、警察官が並んで車道を分断している。
デモ参加者の中には前線に並んだ警察官に食ってかかる人もいて、小競り合いになりかけた場面もあったけれど、ヒートアップしているのはごく数人だけで、警察もよほどのことがない限り逮捕などはしない方針であったのだろう。丁寧口調で「この先には行かないでください!」と道をふさいでいたのだった。

じつをいうとそんな防波堤を突破するのは簡単なことで、僕は易々と官邸前交差点まで辿り着いたよ。(どうやったのかは書かない)

だけど、警察は死守ライン(地図の③)だけは守り抜いたね。
ていうか、官邸前交差点付近では、車道も解放されていなかった。



↑こんな感じ。

当然、僕が動いたような東→西だけでなく、地図の矢印A、Bのような方向からデモに参加した人も大勢いたはずなのだが、彼らとの合流は決してできなかった。
ていうか、僕は見ていないのでわからないのだけれど、地政学(て大袈裟なものではないが)的には、内閣府下交差点から北上する道は、ずっと閉鎖されていたのかもしれない。

ええとですね。
ここまでは、一参加者として、昨夜のデモにどんな動きが会ったのかという話。

安保世代らしき人の中には、人々が一瞬にして車道を占拠したことに大興奮して「もっとやれやれ!」的に煽っていた人もいるのだが、僕だって二者択一で「警察の味方なのかデモ参加者の味方なのか」と問われればデモ参加者だ。だけど、現場の警察官なんか、べつに敵だとは思っていない。

早い時間には、坂本龍一さんとか、社民党の福島みずほ氏とか、共産党の志位和夫氏とか、いろんな人が来ていたみたいだ。
その中から田中康夫氏の発言を紹介しておこう。



「先週に続いて国民の一人として参加をしている田中康夫です。
前回、この集会が終わった後、私が帰る時に1人の警察官の方がセフティーコーンを片付けながら小さな声で「再稼働反対」とおっしゃっていました。
わたくしと目があったら、彼ははにかんでいました。
そして私の事務所のスタッフも、おそらく別の警察官の方が、同じように小さな声で再稼働反対と話していました」


大飯原発前の抗議行動のときも、最前線で人々に立ち塞がる警察官の中に
「ほんとうに申し訳ない。ほんとうに申し訳ない」
と、小声でつぶやいていた人がいたと聞いた。

我々は現場の警察官と敵対する必要などない。
もちろん、警察というのは「現実の国家権力」そのものではあるけれど、我々が目指しているのは武力による国家転覆、クーデターなどではないからだ。

単に「原発をやめろ」と言っているのだ。

ところが、我々がネット上で、あるいは個別の運動で何を言っても、政府、電力、官僚、財界、マスメディアを含めた原子力ムラの連中は、盲なのか聾なのか、人々の声をまったく無視して、ひたすら再稼働に向けて突き進んでいる。
だから我々は、集まって、目に見える形での抗議行動をしなければならないのだ。

目黒に帰ってきて、地元のアイリッシュパブでビールを飲んだ。
その店では福島出身の人が働いていて、僕は彼とよく原発について、あるいは福島の人たちのことについて話をする。
彼が言うには、お店の常連さんの中にも官邸前集会に参加している人がたくさんいるそうだ。
僕のように、集会のあとこの店に飲みに来る人も多いらしい。

で、デモ参加者の中にも、いろいろな意見があるという話になった。
ちょっとでも緊迫した場面になると、「怖い」と引いてしまう女性もいるらしい。
もちろんそれも当然の話だ。
人々が警察官の制止を無視して車道を占拠するような状況というのは、国内では少なくともこの40年間、見たことがない人のほうが圧倒的に多い。
人が車道に出ること自体はたしか非合法ではないと思うのだけれど、警察の制止を振り切れば公執(公務執行妨害)に問われるかもしれない。
混乱した状況に恐怖を感じる女性がいるのも当然だ。

だけど、我々のデモ参加者の99%以上は平和的な抗議行動を望んでいるし、警視庁も(少なくとも今のところは)武力制圧をしようとはしていない。
だから、「怖い」と思う人はもちろん最前線に出てくることはない。ただ、歩道からでも、遠くからでも良いので、今ここで何が起きているか、それを見届けてほしいと僕は思う。

逆に、このデモは甘すぎると思う人もいるようだ。
主催者が警察の用意したマイクで「今日はこれでおしまいです。解散してください」と呼びかけるなど、まったくおかしい、というわけだ。

この話を始めると長くなるのでここでは書かないけれど、僕は、暴力の連鎖は避けるべきだと思う。
これは「暴力は絶対に良くない」というような倫理観などではない。
たとえば、今まさに殺されるという状況であれば暴力もへったくれもない。
ただやはり、戦略的に言っても今は非暴力のほうが力があると思うのだ。
野田佳彦はほんものの悪人だと僕は思うが、それでも少なくとも、我々は今、軍事独裁政権の武力弾圧に対して闘っているのではないからだ。

「再稼働反対」と小声でつぶやく現場の警察官がいるのだから、僕は彼らも味方にしたいと思う。

これは持久戦だ。
(一点突破全面展開ではない)
だから、粘り勝ちを手にしなければならない。

ところで、現場の警察官は基本的には紳士的で、国会議事堂前駅のトイレとかにもいちいちひとりずつ警察官がいたのだが彼らは私服、それもポロシャツにジーンズというような格好で腕に「警視庁」の腕章をつけていただけだった。
警察権力の力を誇示しないという方針だろう。
僕はそれは良いことだと思うのだが、「これだけは許せない」ということもあった。

実際に自分が目にしたわけではないので正確ではないのだが、
最初のほうに書いたように、国会議事堂前駅では警察によって、4番出口からしか出られないようになっていた。
その4番出口をも、警察が封鎖したというのだ。
http://blog.livedoor.jp/amenohimoharenohimo/archives/65813862.html

「混雑しているから」などの理由で何百人もの人々をデモに参加させないようにしたらしい。
聞いたところによると、人々からは「開けろ!」コールが鳴り響き、「なぜ封鎖するのか」という問いにも、現場の警察官は「上からの指示で…」としか言えなかったそうだ。

「上からの支持」であるならば、どんな法令に基づいた指示なのか?
というか、いかなる法令に基づくものであったとしても、人々をデモに参加させないというのは、憲法第21条で認められた「集会の自由」に反する明確な違憲行為である。
これだけは、徹底的に抗議すべきである。

【日本国憲法第21条】
集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。


↑次回、遅めの時間からデモに参加する人は、これ暗記ね。