放射能を受け入れる覚悟のある僕でも、福島の雨は怖い。 | 語り得ぬものについては沈黙しなければならない。

放射能を受け入れる覚悟のある僕でも、福島の雨は怖い。

ブログもしばらく間が空いてしまった。

前回記事を書いたのは3/6だったが、そのあと3/9は遊びに出かけて(新潟でスノーボード)、3/10~3/11は福島と思っていたのだけれどホテルがどこも満室で、でも3/10の「てつがくカフェ@ふくしま」だけは参加したかったので日帰りで行ってきた。
昨年夏以来の福島だ。

「てつがくカフェ」と言っても、小難しい存在論や認識論などの話をするわけではない。
「もう一歩踏み込んで考えよう」というような市民集会であって、僕は、今福島の人たちが何を考え、何を思っているのか知りたかったのである。

二次会まで参加して、いろいろな話を聞くことができた。
南相馬に実家があって、家族がみんな避難している人の話とか聞いていると、いつものことながら、僕は、そして我々は、なんというとんでもないことをしてしまったのだろうと、かなり暗い気分になる。

もちろん、たかが何時間か話をしただけで福島の人たちのことがわかったなどというつもりはない。
でもそのあと、複数の福島の人から「福島のことを考えてくれて嬉しい」というようなことばをいただいた。

もちろん考えますとも。

一年前の今頃は、テレビに映し出される東北沿岸部の津波の様子や、被災された方々が必死に生きていく姿を見て、僕は泣いていた。
そして、誰もがそうだったと思うけれど、自分には何ができるのか、自分は何をしなければならないのかを考えた。
福島の人たちに対しても、それと同じことを考えている。

もちろん、地震、津波は天災で、原発災害は人災だ。
当然のことながら人災は責任の所在の明確化と責任者の処罰が絶対に必要だが、それと同時に、原発災害で大切な人を失くし家を追われ故郷を奪われたたくさんの人たちに、僕はどう向き合っていかなければならないのか、自分には何ができるのか、自分は何をしなければならないのか、よく考えて実行したい。
それが一番大切だと、僕は思う。

3/10夜、福島市内は小雨だった。
傘を差していない人が半分くらいいた。
僕は東京では少しの雨なら面倒くさいので傘は差さない。
でも、福島に来ると、傘を差さないのは正直ちょっと怖いと思う。
水たまりは放射性物質も溜まる場所なので避けて歩いた。

僕はもう50近いので、放射能の影響は成人一般から比べてずっと低い。
ましてや子どもと比べたら数百分の一以下だろう。
だから東京では、野菜も肉も魚も、産地なんか考えずに食べる。
食べ物は無尽蔵にあるわけではないから、あとは「誰が何を食べるか」という「分配」の問題となるからだ。
僕は、原発を許してきた大人の一人として、あえて汚染された食品を食べることはしないにせよ、子どもではないのだからいちいち気にせず食べようと思っているのである。
せめてもの責任の取り方だ。
なので、ちゃんと調べればきっとある程度内部被曝しているはずだが、それは受け入れて生きていこうと思っている。

しかしそんな僕でも、福島で雨に打たれるのはちょっと怖いから小雨でも傘を差す。
弾丸が二発入ったリボルバーと一発だけのリボルバー。ロシアンルーレットをするとしたらどちらを選ぶかと言えば、一発だけのほうに決まっている。
そんな感じ。

この僕でもそうなのだ。
「放射能は危険だが東京の大人はある程度甘んじて受け入れるべきだ」と言って顰蹙を買うような僕でさえ、福島の雨や水たまりは怖い。

だとしたら、福島に住む子どもたちやその親、妊婦さんやこれから妊娠するかもしれない若い女性は、どれだけの恐怖を抱えて暮らしているのだろう?
そんなことを想像するとかなり胸が痛む。

あとは傘を差していない地元の人たち。
なぜ、あえて弾丸二発のリボルバーを選ぶのか?

もちろん、無知なのであれば知るべきであろう。
でも、そうではなくて、
「いちいち気にしていたら福島では生活できない」というような「割り切り」や、
「危険なんかないと言うことを福島に住んで証明したい」というような「意思表示」、
「これくらいの小雨で傘を差すと風評被害を助長すると非難される」というような「我慢」。
もしもそんな気持ちであるとすれば、それはものすごい悲劇である。

3/10の夜、最終の新幹線で福島から東京に帰った僕は、地元目黒のバーで福島出身の男の子と原発談義をしていたら朝になってしまった。
3.11はほんとうはデモに出ようと思っていたのに、寄る年波か二日酔いが抜けず、結局布団の中で一日中テレビの特番を見ていた。
3/13~3/14は仕事で大阪に行って、3/15は確定申告の作業。
そんなふうにしていたら、もう3月も下旬だ。

いろいろ書きたいこともあるし、事故から一年が経過してこれまで読んだ福島関係の本の中からrecommendを紹介しようと思っていたのだけれど、それはまた今度。