twitter再開 | 語り得ぬものについては沈黙しなければならない。

twitter再開

twitterを再開しようと思う。
@jun_kashima

震災直後にアカウント登録して、その後主に被災地へ救援物資を送るためのやりとりなどをしていたのだけれど、twitterというのは情報共有のためのツールとしてはすごいと思うのだが、議論にはあんまり向いていない。
少なくとも僕の場合は、だらだら長い文章を書くので駄目だ。

1400字書くのは楽だが、140字というのはとても難しい。

仕事としてコピーを書くときには、数文字くらいのものを作るのだけれど、当然、たった数文字のためにものすごく時間がかかったりする。
別の例、雑誌で言えば、数文字というのがタイトル。
僕は今じゃこんなだらしない文章を書いているが、雑誌のデスクをやってたときには、若い編集者に三日三晩駄目出しをして、タイトルの練り直しを命じていたのであった。

で、140字といえば、タイトルの横にあるリードである。これは、雑誌であれば本文が別にあるからパキッと書ける。
でも、140字それだけで何か述べるというのは、まあ、原稿料いただければやりますけれど、そうじゃなければたいへん面倒くさい。
やはり、まともな言論には短すぎるのだ。
140字の原稿×20本をまとめてtweetしたりして人に迷惑をかけたりしたこともあるので、twitterはもういいや、とほったらかしにしていたのであった。

だが先週、第5回「脱東電オフ~うんこの会~」(http://blog.livedoor.jp/amenohimoharenohimo/archives/65784172.html)に(二次会からだけれど)行ってみんなと話をしていたら、全員twitterやっているので、俺も再開しようかな、と思うに至ったのであった。

というか、まあ僕はあんまりtweetはしないと思うけれど、原発問題を含めて、これからの日本をどうするのか、ということについては、今後ますます「情報戦」になっていくと思うので、一兵卒としては第一線にいなくちゃいけないな、と思うのである。

さて。

今日は福島県二本松市の家の薪ストーブの灰から結構な量のセシウムが出た。
この前の放射能マンションでちょっと怖がっている人もいるみたいだけれど、言っておくが、今後もあちらこちらから限りなく出るぞ。
覆水盆に返らずだ。
我々は、とんでもないことをしでかしてしまったのだ。

年末、原発の状態や周辺の放射線量などをリアルタイムで監視するERSS(緊急時対策支援システム)というシステムが丸一日以上ダウンした。
全国すべての原発を監視しているシステムである。
だから、もしもこのシステムがダウンしている間にどこかの原発で事故が起こったら、大変なことになっていたかもしれない。

まず第一点。

コンピュータシステムというのは、ものすごい分量の式で構成されている。
たとえば、パソコンのアプリケーションでも100メガくらいの容量のものは普通にあるが、100メガというと104,857,600、つまり半角英数で1億文字以上である。
もちろん、画像や動画などの「重いデータ」を含んでいるせいでもあるが、それらを差し引いても、数千万文字分はある。
これらが(単純にイコールではないけれど)、アプリケーションを動かす「式」であって、ある場合には、その中の数千万分の一文字間違えただけで、プログラムはストップしたり、無限ループに陥ってしまう。

僕のパソコン歴はたかだか20年弱だが、以前のソフトにはそんなバグも多かった。
最近ではかなり良くなったけれども、それでもOSがフリーズすることもある。
聞いた話だけど、何千人規模のWindowsの開発チームには、前向きに次のことを研究するチームと、すでにリリースされたものにバグがないかどうか日夜チェックしている後ろ向きのチームがあって、後者のチームがときどきバグを発見して、WindowsUpdateでみんなのパソコンをこっそり直しているらしい。

何が言いたいのかと言えば、原発を見張るERSSは、人命に関わる大事なシステムなのだから、当然かなり念入りに作られているのだろうけれど、それでもバグはあり得ると言うことだ。
あらゆる機械(もちろん原発も)には故障の可能性があるのと同様だ。

二点目。

報道によると、ERSSがダウンしたのは「データを保存するメモリ領域が不足したことがトラブルの原因」(http://sankei.jp.msn.com/science/news/120111/scn12011119430002-n1.htm)だったらしい。
詳細はわからないが、これは、ソフト自体が悪いのか、扱う人間が悪いのか、そのどちらか(あるいは両方)である。

ソフト自体というのは、このような大事なソフトであるならば、事前に「もうすぐメモリ領域がなくなりますよ」というアラートを出して然るべきだからだ。

これは、式を間違えたというような単純なバグではない。
事故前、政府や電力は「原発は五重の壁があるのでなにがあっても放射能は漏れません」などとふざけたことを言っていた。
五重の壁とは、燃料を固めた「ペレット」、燃料棒の外側の「燃料被覆管」、「原子炉圧力容器」、「原子炉格納容器」、「原子炉建屋」の5つであるが、福島第一原発事故では、その五重の壁がことごとく破壊された。
それと同様に、ERSSソフトの開発者も、たぶんいろいろなリスク回避の方策を施したつもりだったのだろう。
でも、メモリ領域(というのがなんのことかわからないが…)が一杯になってシステムがダウンすることは想像できなかったのだ。

つまり、式がどんなに完璧であっても、それを設計する人間というのは完璧な存在ではあり得ないので、常に、システムダウンは起こり得る。

扱う人間が悪かったのかもしれない。
定期的にメモリ領域(なんのことだろう?)をリセットしなければならなかったのにもかかわらず、忘れていたのだ。

まあどっちにしても人がやる以上完璧ではあり得ない、どころか、原発が爆発するという重大な事故が起きた後だというのに、誰も気をつけていなかったのだし、こんなメモリ不足(?)のようなきわめて単純なトラブルが起こる。
そういうものなのだ。

三点目はやはり、原子力ムラの腐りきった体質だ。

なにしろ、原子力安全・保安院はこのトラブルを一日以上公表しなかったのだ。
隠したかったのだとすれば確信犯であり、まさに犯罪といって差し支えないだろうが、「年末で気の緩みがあった。反省している」と陳謝したらしい。
それはそれでもっと問題だ。
人命がかかっているのだ。「年末の気の緩み」ですむ話ではない。
原子力ムラでは一事が万事この調子のようだが、担当者はちゃんと処分されたのだろうか?

さてさて。

ERSSの話だけれど、年末の件を書きたかったのではない。

昨日の報道でご存知の通り、事故当時、福島第一原発では、原子炉の状況など各種データをリアルタイムでERSSに送信する装置(MC=MediaConverter)の非常用電源がつながっていなかった。
そのため、地震発生直後の原子炉のデータを収集、送信できなかった。
なぜ非常用電源がつながっていなかったのかと言えば、ケーブルの長さが足りなかったからだ。(一度配電ミスがあって、直そうとしたら長さが足りないことに気付いたという)

これだけで充分笑えない笑い話だが、その先がある。
MCは、普段は原発一号機から電力をとっているので、それまでは問題なく動いていた。
だからいいだろう、と思っていたらしい。
要するに、緊急時に必要な装置なのに、原子炉が止まるというそれこそ緊急時には使えないようになっていたのだった。
停電のときのための非常灯の電源をコンセントから取っているので肝心の停電のときには電気がこない、というような話だ。
『東電は「送信装置へは福島第1原発1号機から電気が送られており、非常用電源は緊急性が高いとは思わなかった」と釈明した』らしい。(http://www.jiji.com/jc/zc?key=%a3%c5%a3%d2%a3%d3%a3%d3&k=201201/2012011900443
おいおい。
釈明になっていない。

さらにそのまた先もある。
ケーブルの長さが足りない、ということがわかった設置工事のときには、原子力安全・保安院の検査官が立ち会っていたのに、MCが非常用電源に接続できていないことに気がつかなかったらしい。

さらにさらにその先もある。
最初は気がつかなかった間抜けな原子力安全・保安院も、事故後検証をしていた夏頃には、MCが非常用電源につながっていなかったことを知ったのにもかかわらず、これまでずっと隠してきたのだ。
『保安院が未接続を把握後も公表しなかったことについて、森山善範原子力災害対策監は「私自身が知らなかったので、機会を逸した」と弁明した。』(http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120119-00000593-san-soci

「私自身が知らなかった」というのは、嘘をついているか、もしくは「原子力安全・保安院というのは、そもそも大事な情報を共有できない駄目な組織なのです」と認めているということだ。

まさに「俺のせいじゃないよ」と言いたげな森山善範というのは、原子力安全・保安院が「やらせ質問」工作をしたとされる中部電力の原発(プルサーマル)シンポジウムに出席していたにもかかわらず、すっとぼけている人物だ。(http://www.jiji.com/jc/zc?k=201107/2011072900456&rel=y&g=soc
常に保身に必死なんだな。

政府は、SPEEDIのデータを公表しなかったことについて、「原子炉の正確なデータがなかったから云々」と言っている。
福島第一原発のMCに非常用電源が接続されていなかったことは、今後彼らの言い訳のひとつになるのだろう。

でも、政府は、国民に知らせるずっと前に、米国にだけはSPEEDIのデータをスピーディーに(笑)知らせていたことが明らかになっており、それもあって米軍は風下から逃げたりしていたようだ。
要するに、日本は米国の属国なので、政府は福島の人たちより米国との関係を優先したのである。
沖縄の人たちより米軍基地を優先するのと同じだ。
「これは大変なことになった」というときに、まず知らせるのは国民ではなく、米国なのである。

SPEEDIのデータ隠しが物語るのは、日本という国は、国民の生命・財産よりも、「今のシステムの維持」(米国との関係や原子力ムラの温存)のほうが大事だということである。

小出裕章さんは昨日の『たね蒔きジャーナル』で、「ERSSが動かなかったことがSPEEDIが動かなかったことにものすごく重大に影響したとは思いません」と言っているが、それは、「もしERSSがちゃんと動いていたとしても、政府はSPEEDIのデータを国民には公表しなかっただろう」

そういうことだと思う。

でも、昨日の『たね蒔きジャーナル』の小出さんの発言に、僕は素人ながらひとつだけ付け加えさせていただきたいのは、もし福島第一原発のMCの非常用電源が生きていて、地震が起きてから津波に襲われるまでの間の原子炉の情報がERSSに送信されていたとすれば、「原発が津波の前に地震で壊れていた」ことが裏付けられたのではないか、ということだ。
田中三彦さんの指摘のように、津波の前の地震で配管に破損があったと考えれば、その後の数値はすべて辻褄が合う、ということもシミュレーションによって政府は(たぶん嫌々ながら)認めている。
つまり、津波がなくても原発はやられるわけで、今回の事故は想定外でもなんでもなくて、今の安全基準はまったく駄目であり、ストレステストなんか以前に、今の安全基準で立てられた原発はすべて停止しなければならなくなるのである。
ERSSのデータが、それを証明したかもしれない、と思うのだ。

小出さんからいただいた年賀状には
「滔々と流れる歴史の中で、自分を恥じないように生きたいと願います」
とあった。

ほんとうにその通りだ。
僕は無力だし、最初に書いたように140字を乱発するような才能もないが、こうやってだらだらでも、何か書いていこうと思う。

ほんとうは、twitterを再開するにあたって、僕が何をしているのか、ちょっとした自己紹介のようなものを書こうと思っていたのだけれど、それはまた今度。

あと、今、ニュースをチェックしたら、東電の実質国有化について「過半数を社外取締役に」という方向で検討しているそうだ。(http://www.47news.jp/CN/201201/CN2012011901001988.html
僕を社外取締役にしてくれないかなあ(笑)。

国有化と言うことについてはいろんな議論がある。
その根っこは「国」というものをどう捉えるかだ。
これも、語るべきテーマではあるが、また今度。