海洋汚染と「放射能マンション」 | 語り得ぬものについては沈黙しなければならない。

海洋汚染と「放射能マンション」

昨夜のNHKスペシャル『シリーズ原発危機 知られざる放射能汚染~海からの緊急報告~』を見た。
海底の汚染は、福島第一原発近くはもちろんのこと、千葉県までかなりひどい。
東京湾にも河川から流れてきたセシウムが溜まってきている。
うろ覚えだけどたしか、河口付近の海底からの土は2000ベクレル/Kgくらいのセシウムが検出された。
川を伝わってゆっくり海に流れてくるので、シミュレートすると、一番汚染がひどくなるのは2年2ヵ月後だそうだ。
さらに、東京湾は閉じた形だから、その後もなかなかセシウムは薄まらないらしい。
僕はもうオヤジで、寿司は大好きだから気にせず食べるけれど、子どもには江戸前は注意しなければならない。

去年7月に完成した福島県二本松市の新築マンションの室内で、最大1.24μSvの放射線量が測定された。
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20120116k0000m040066000c.html
年換算すると10mSvを超える、屋外よりも高い数値である。
原因は、汚染された石で作られたコンクリート。だからもう、線量を減らそうとすればマンション自体を壊すしかない。

どちらも、原発事故のすぐ後には指摘されていた事態である。

少なくとも僕が編集して9月に発売された『原発・放射能 子どもが危ない』 (小出裕章・黒部信一著 文春新書) には、魚の汚染についても、「放射能マンション」についても書いてある。
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マンションの件は、住んでいる女子中学生がたまたま自分の線量計で測ったから発覚したわけだけれど、だから当然、計測されていないだけでほかにもそんなマンションはたくさんあるはずだ。
僕はコンクリートというのがどういうふうに流通しているのかまったく知らないのだけれど、もしそれが広域であるとすれば、福島県外にも新築の放射能マンションがいくつもあるだろう。

呆れてしまうのは、海洋調査にしても汚染コンクリートにしても、国はなんにもしていないということだ。

秋に汚染された藁を食べた内部被曝牛が、結局全国に流通し、はるか離れた四国の幼稚園や小学校の給食にも使われていたことがわかったが、そうなって始めて、大慌てで調査をし、「今は調べているので安全です」と開き直る。
そのときとまったく同じことを繰り返している。
コンクリートが汚染されるなんて言うのは、小出さんの指摘がなくてもちょっと考えればわかることなのに、事故から10ヶ月間、なんの対策もしてこなかった。

まったく腐った国である。
なにが「収束宣言」だ?
当然、こういうニュースは世界中に伝わるわけで、「日本というのは国民の生命や健康のことなんか全然考えていない国なんだ」ということを、全世界に知らしめているのである。
恥ずかしいと思わないのだろうか?