文春新書『原発・放射能 子どもが危ない』(小出裕章/黒部信一) | 語り得ぬものについては沈黙しなければならない。

文春新書『原発・放射能 子どもが危ない』(小出裕章/黒部信一)

amazonに出てから書こうと思っていたのだけれど、楽天ブックスや紀伊國屋書店のサイトにすでに載っているので、書きます。

【楽天ブックス】
http://books.rakuten.co.jp/rb/%E5%8E%9F%E7%99%BA%E3%83%BB%E6%94%BE%E5%B0%84%E8%83%BD-%E5%AD%90%E3%81%A9%E3%82%82%E3%81%8C%E5%8D%B1%E3%81%AA%E3%81%84-%E5%B0%8F%E5%87%BA%E8%A3%95%E7%AB%A0-9784166608249/item/11314155/
【紀伊國屋書店BookWeb】
http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/416660824X.html

小出裕章さんと、小児科医の黒部信一さんの共著による『原発・放射能 子どもが危ない』が、9月下旬に文藝春秋社から発売になります。

小出さんの新書版の著作としては、扶桑社の『原発のウソ』、幻冬舎の『原発はいらない』に続く3冊目ということになります。

僕が先週、小出さんと一緒に沖縄に行ったりしたのは、この本を作るためだったのでした。

僕はフリーのライター、編集者として出版界に関わっているのですが、福島の事故があって、これはいかん、何とかしなければと思ったときに、今、一番信頼できる人の本を作ろうということで、熊取の京都大学原子炉実験所に小出さんを訪ねたのでした。
週刊文春とか文庫本とかでいろいろお付き合いがある文藝春秋社に話を持って行ったところ、ちょうど「子どもと放射能」というテーマを温めていた新書の編集者がいらっしゃり、では一緒にやりましょうということになったというわけです。

黒部信一さんは小児科医としてずっと子どもを診てきた方で、子どもの健康のことには非常に詳しい。なおかつ、チェルノブイリで被曝した子どもたちの支援活動を長年行ってきた「子どもの放射能被害」の第一人者です。6月からは、広河隆一さんらと「未来の福島こども基金」を立ち上げて、福島県内で放射能測定や、子どもを持つ親のための相談会を開催したりしています。

そんなわけでこの本は、9月21日(だったっけ?)に発売になるのですが、じつは9月には、すでにamazonに載っているだけでも、河出書房新社、筑摩書房、ベストセラーズ(これは複数の人の共著)から小出さんの本が出版されますし、他の版元からも9~10月に発売の本があります。
どういうことかというと、各版元から多くの編集者が同じ時期に小出さんのもとを訪れたというわけです。
事故後、一番最初に出した扶桑社の担当者はさすがです。二番目の幻冬舎は、企画から出版まで、かなり素早く本を作ったのではないかと思います。素早さは大事です。

で、僕も何回も小出さんとお話しをする中で、これからも他の版元からもいろいろ本が出ることは聞いていたので、できるだけ他の本とかぶらない内容にしよう、他の本やネットでは語りきれない深いものにしよう、とつくってきたのがこの本です。

読んでいただければわかると思いますが、原子力の専門家である小出さんと、チェルノブイリを見てきた小児科医である黒部さんが、「子どもと放射能」というテーマを実に的確に語ってくれています。
小出さんの信頼性はもちろん、黒部さんは擦り傷から癌まで、子どものあらゆる症状と、現実に被曝させられたチェルノブイリの子どもたちをたくさん診てきた上での見識です。「今のレベルなら放射能は危なくないですよ」などという医者もいますが、チェルノブイリの子どもたちのことをどれだけ知っているのだろうかと思います。

また、このブログを読んでくれている人であればわかるかと思いますが、僕は反原発というのは、単なる社会問題や政策、エネルギー問題やイデオロギーとかではなく、生き方の問題だと思っています。
その意味で、小出さんも黒部さんも信念を貫き通してきた人であり、原発が今どうなっているのかというようなことだけではなく、生き方や信念まで語っていただきました。
たとえば本書第6章には、小出さんの考えの核心(なぜ原子力に反対するのか)が、福島の事故後の本の中ではじめて明確に打ち出されていると、ご本人お墨付きです。

原発問題も情報戦の様相を呈してきています。

たとえば、原発推進の讀賣新聞などは、昨日も「原発を止めたせいで無理矢理動かしている火力発電所は事故ばっかり」というようなプロパガンダに必死です。
小出さん流に言うと、機械なのですから、事故はあるのです。
火力だって、原子力だって、事故を起こすのです。
しかし、火力は事故現場に行ってさっさと調べて修理することができますが、福島第一原発2号機、3号機は、未だに水位計の調整すらできていない。線量が高くて誰も近づけないわけです。火力発電所の事故とはまったく違います。

だいたい、これまで原発で事故がどれくらいあったのか。
福島第一原発だけでも、これまで原子炉を停止するほどの事故が50回以上起きています。
1978年には3号機で7時間以上に及ぶ臨界事故を起こしたのですが、東京電力はこれを29年間も隠してきました。1984年の2号機の臨界事故も、運転日誌などを改ざんし、23年間隠蔽しました。89年、93年、96年に機器の一部にひび割れが見つかった際には、虚偽報告をしました。94年、96年には炉心のシュラウドという部分のひび割れが起きていたのに、報告さえしませんでした。

まったくもって原発推進派の世論操作には呆れるばかりですが、連中に好き放題言わせていてはいけない。
僕としては、せめて編集者としてできること、つまり、小出さんや黒部さんのような人の本が一冊でも多く本屋に並ぶことを願っています。

以上、告知および宣伝でした。