僕はよく本屋に行って文庫本を買いあさる。
たいていは背表紙のタイトルだけで選んで、
その作家が有名だろうが無名だろうが
おかまいなしに5~10冊くらい買ってくる。
川上弘美という作家。
知らない人はほとんどいないだろうし、
読書好きの仲間からもよく薦められていた。
どこの書店でもこの方のコーナーは必ずあり、
僕もこの名前を見ると足を止める。
ところがどうにもその小さな本を手に取ることができないでいた。
なぜだかわからないが、書棚の前で逡巡してしまい、
あげく手に取ることすらせずにその場を立ち去っていた。
そんなことをもう5年以上していたような気がする。
ところが数ヶ月前、彼女のエッセイ集をどうにも買わなくてはいけない
雰囲気に包まれ、一冊だけ買ってきた。
うず高く積まれた積ん読の小説の下のほうで、彼女のエッセイ集は
申し訳なさそうにたたずんでいた。
今日になってなんとなく読んでみると、これが以外に面白く、
まるでシルクのパジャマを着てベッドにもぐりこむかのような
心地よさに包まれた。
どんどん読み進んでいく。
突然、ハッとするフレーズが現れた。
『揉め事があったときに、揉め事に係わる人間のどの者にも
遺恨を残さない解決というものはあり得ない。』
ここしばらく、いろいろな方面でマイナートラブル多かったが、
今日になって一気に解決の方向で進んでいった。
このたったワンフレーズに今日のこのときに出会うために
今までおあずけをくっていたのかもしれない。
文学というのはやはり偉大だと感じる。


