僕は子ブタのフィリップ。

指揮者になりたくてこの街に来たんだ。
でも、僕には才能がないみたい。意地も根性も、僕には何にもない。
もう田舎へ帰ろうと思ったら、ポストに母さんからの手紙が届いていた。
 

元気ですかフィリップ。泣いていませんか?あなたは優しい子だからきっとたくさん傷つくことがあると思います。
負けないでとは言いません。いっぱい負けていいのよ。あなたが今夢があって頑張りたいことがある、それだけで母さんは嬉しくて胸がいっぱいです。
でも、あなたがあなたでいられなくなるほど辛い時は、すぐに帰っていらっしゃい。
あなたより大切なものなんてこの世界のどこにもないのよ。
いつだってあなた味方、
 

母さんより


僕は、ただ泣いた。
やがて朝日が昇って、「コケコッコー」の声が聞こえて、僕の中に得体の知れない音楽の大合唱が聞こえた。身体中が太陽のように燃えていた。なんだか分からないけど僕はやれると思った。
今日も怖い教授の授業がある。
でも、僕の夢は指揮者になることで、教授に認められる事じゃない。
僕はもう今を最高に自分のものにしてやるぞと決めた。
押しても引いても動かない壁は飛び越えればいいんだ!
僕は燃える心のまま、お風呂にも入らないで学校へ行った