好きだったコーヒーがその時間だけは
全く美味しく感じない。ただの黒い飲み物。
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いつも会社に行く前に会社に行きたくないので
近くのコーヒー屋さんで始業までの時間を
潰していた。
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会社都合で工場の仕事をすることになり
腱鞘炎などを起こしていた。
医者からはやめない限りずっと治らない
と言われた。
工場で働いて、物を作るのが好きな人は
いいと思う。指が変形していても
それが勲章だと感じる人もいるのはわかる。
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でも僕はそれを欲しいとは思わなかった。
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時間が経つのが遅く感じられて
時計を見ても5分も過ぎてない、、
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昼休みは会社支給の弁当。
全く美味しいと感じられないし
胃が受け付けてなくて
残してばっかりだった。
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好きでもない仕事をお金のためとも割り切れず
こんなとこで何やってんだろ?
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この会社に入る前から数えたら
この言葉たちはこれまで頭の中で
何回言い続けてきたんだろうか?
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だけど、ㅤㅤ
今までやってきたように転職サイトばかり見て
今度は工場がない会社ならもうどこでもいい。
そんなふうに思って探していた。
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そんな気持ちで探していたので
再就職先は意外と早く決められて、
やっと解放される。
ただそれだけで嬉しいとか期待とか
全く湧いてこなかった。
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あの頃の僕が今やっていることを
知ったらびっくりすると思う。
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僕は何か秀でたものがあって実績を残して
会社勤めを辞めたわけじゃない。
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実際に起業している人を見ていると
僕のようなタイプで起業している人を知らない。
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本当に小さなことをただただ続けてきただけで
なんとか生活できるようにはなった。
仕事を依頼してくれるのもそうだし
何より周りのみんな本当に優しかった。
それが嬉しかった。
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今はコーヒーもご飯も美味しい。