
北朝鮮は28日午後11時42分頃、同国中部から弾道ミサイルを発射した。
ミサイルは45分程度飛行し、北海道・奥尻島沖の日本の排他的経済水域(EEZ)内の日本海に落下したとみられる。航空機や船舶などの被害は確認されていない。北朝鮮の弾道ミサイルが日本のEEZ内に落下するのは、6回目で、7月4日以来。弾道ミサイル発射は今年11回目。
菅官房長官が29日未明、首相官邸で記者会見を開き、明らかにした。
防衛省などによると、ミサイルの高度は3000キロ以上に達したとみられるという。北朝鮮が今月4日に大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星14」を通常より高い角度の「ロフテッド軌道」で発射した際は、約40分間飛行し、高度は過去最高の2500キロ・メートル超に達したと推定されている。今回の飛行時間はそれよりも長い45分間飛行しており、日本政府などはロフテッド軌道でICBMを打ち上げた可能性が高いとみて、分析を進めている。
韓国軍合同参謀本部は、北朝鮮が同国北部・慈江道(チャガンド)の舞坪里(ムピョンリ)から弾道ミサイル1発を発射したことを明らかにした。
米国防総省のデービス報道部長は今月5日、火星14について、「ICBMの要件となる5500キロ・メートル以上の射程があった」と認めた一方で、ICBMに核弾頭を搭載できる能力や、大気圏再突入時に弾頭を高熱や振動から守る技術が確認されていないため、「完全な脅威と見なすには、まだいくつか不明な点がある」としていた。
このため北朝鮮は再度、同様の実験を行い、大気圏再突入の技術を立証しようとした可能性もある。
北朝鮮が深夜に弾道ミサイルを発射するのは極めて異例。奇襲攻撃能力を誇示する狙いとみられる。
政府は北朝鮮に外交ルートを通じて厳重に抗議した。政府は29日未明、首相官邸で国家安全保障会議(NSC)4大臣会合を開き、対応を協議した。
これに先立ち、安倍首相は首相官邸で、北朝鮮のミサイル発射について、「ただちに分析し、国民の安全確保を第一に万全を期したい」と述べた。
米CNNテレビは、米国防当局者の話として、北朝鮮北西部の平安北道(ピョンアンプクト)亀城(クソン)に21日、移動式発射台が到着したと報道。日米韓3か国は、北朝鮮が1953年に朝鮮戦争休戦協定が署名された記念日にあたる27日に合わせ、弾道ミサイルの発射実験を行う可能性があるとみて警戒を強めてきた。
◆ロフテッド軌道=通常より高い軌道に打ち上げるミサイルの発射方法。飛距離は通常軌道で撃つよりも短くなる。落下速度が速くなることなどから、迎撃が通常軌道と比べて難しくなる。北朝鮮が7月4日に発射した大陸間弾道ミサイル(ICBM)は高度2500キロ・メートル超とされ、日本政府などはロフテッド軌道による発射と分析している。