人生に役立つ格言
「春風を以て人に接し秋霜を以て自ら粛しむ」 佐藤一斎
佐藤一斎は江戸後期の学者で、三〇〇〇人の門人がいたという。しかしその学問の幅は広く深かった。江戸時代の学問は漢学でも朱子学が尊重され、陽明学は退けられた。 しかし一斎は両方を教えた。そのため、門人の中からは多種多彩な人物がたくさん出た。大塩平八郎や西郷隆盛も一斎の学問の影響を受けたという。一斎は美濃国岩村(岐阜県恵那市)藩主松平家の家老も務めたこともある学者だった。が、主として幕府の大学頭林家の学頭として努力した。 学者に門人が多いのは単にその学説だけによるものではなかろう。やはり人となりが大切だ。一斎は人生の態度として「人に接するときは春風のように柔らかく温かく、しかし自分に対しては秋の霜のように厳しくあらねばならない」と告げていた。 「春風を以て人に接し秋霜を以て自ら粛しむ」――人として生きていくうえで、この言葉を心に刻んでおきたいものである。